九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: O11-3
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セッションロ述11 スポーツ・健康2
学齢期野球選手におけるPosterior Shoulder Tightnessに対するStretching効果 :ランダム化比較試験を用いた比較
遠藤 稜太加藤 未佳松村 美希長野 友彦烏山 昌起河上 淳一
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キーワード: 投球障害, Stretching, 学齢期
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抄録

【目的】投球障害肩は学齢期の野球選手が競技を続ける上で問題となる。障害発生には肩内旋・水平内転の可動域制限を生じさせるPosterior Shoulder Tightness(PST)の関与が報告される。可動域改善にはStretchingが頻用される。先行研究ではCross Body Stretch(CS法)やSleeper Stretch(SS法)の単独介入の有用性が報告され、系統的レビューでもCS法の有用性が報告されている。しかし、先行研究は成人対象であり、学齢期に求められるStretchingは不明である。本研究の目的は、異なるStretching介入を比較し、学齢期野球選手におけるPSTの介入方法を検討することである。 【方法】本研究はCONSORT声明に準じたランダム化比較試験である。対象は小中学生の軟式野球チームの選手とした。包含基準は小学5年生以上、除外基準を肩の症状がある者とした。群分けはCS法の単独介入群(CS群)とCS法とSS法の複合介入群(Combine群)とし、適応的ランダム化法で割り付けた。盲検化は評価者のみ行った。介入方法は、CS法で端座位にて投球側肩水平内転を反対側上肢で行わせ、SS法で投球側側臥位にて肩肘屈曲90°から投球側肩内旋を反対側上肢で行わせた。実施方法は、30秒間持続伸張、1日入浴前3セットを3週間とした。アウトカムは、投球側肩外転90°での内外旋可動域の和(TA)と肩水平内転(HFT)の可動域とし、デジタル傾斜計で計測した。統計は、介入前後の群内比較に対応のあるt検定、介入後の群間比較に共分散分析を用いた。解析はRを使用し、有意水準を5%と定めた。 【結果】対象者は、CS群12名とCombine群12名だった。CS群の結果は、TAが介入前105.98±7.11°、介入後123.23±4.30°であり、介入後で有意に改善(p=0.03, CI:1.46∼33.04)、HFTが介入前84.74±2.68°、介入後94.18±1.76であり、介入後で有意に改善した(p<0.01, CI:5.81∼13.05)。Combine群の結果は、TAが介入前110.26±6.83°、介入後122.24±4.30°であり、介入後で有意に改善(p=0.02, CI:2.75∼28.80)、HFTが介入前83.89±2.57°、介入後95.58±1.76°であり、介入後で有意に改善した(p<0.01, CI:5.69∼16.52)。介入後の群間比較はTA・HFTで有意差を認めなかった(TA:p=0.85,CI:-10.86∼13.05・HFT:p=0.46, CI:-5.74 ∼2.70)。 【考察】群内比較の結果より、CS法とCombine法の有用性が確認された。群間比較の結果では、Combine群がCS法とSS法の複合介入を行ったにも関わらず、CS法の単独介入したCS群と同等の改善効果であった。先行研究ではCS法とSS法は解剖学的な伸張部位が異なると報告されているが、本研究ではCS法単独介入でTA・HFTの改善効果を認めた。CS法は投球障害予防を目的としたStretchingに有用であると考えられた。CS法の有用性は成人でも報告されていることから、年齢を問わずPSTに有用なStretchingであると考えられた。 【まとめ】CS法単独介入とCS法・SS法の複合介入は、TA・HFTを同程度改善させる。CS法単独介入でもPSTを軽減させることから、CS法は学齢期の投球障害肩予防に有用である可能性を示した。 【倫理的配慮】倫理委員会の承認を得ており(倫理番号:2313)、ヘルシンキ宣言に基づく手続きで同意を得た。

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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