主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【目的】 拡散型圧力波 (以下:RPW)は、圧縮空気により弾道圧力波を発生させ、筋・腱付着部症などの治療に用いられている。Yバランステストは、下肢の傷害発生リスクの予測やパフォーマンステストとして用いられている。しかし、RPW照射によるパフォーマンスに及ぼす影響については不明である。今回、腓腹筋に対するRPWがパフォーマンスに及ぼす即時効果について照射前後で比較した。 【対象および方法】 対象は、健常男性10名10足、平均年齢24.7(±1.91)歳、平均身長170.1(±5.9)cm、平均体重61.9(±4.7)kg、BMI21.9(±1.6)kg/m2であった。測定は全て利き足とした。 計測手順は、①荷重位足関節背屈可動域、超音波診断装置(以下:エコー)での腓腹筋の羽状角と筋束長、Yバランステスト、底屈筋力を計測した。②次にRPWを腓腹筋に照射し、③再度、荷重位足関節背屈可動域、羽状角・筋束長、Yバランステスト、筋力を計測し、RPW前後で比較した。 計測方法は、Yバランステストは腰に手を当て軸足を利き足とし、非利き足で前方・後外側・後内側方向にリーチした最大距離を3回計測し、平均値を算出した。正規化は、下肢長で除した値を採用した。荷重位足関節背屈可動域は、膝伸展位および屈曲位のWeight bearing lunge test(以下:WBLT)にてiphoneを用いて計測した。羽状角・筋束長はエコーを用いて、足関節を背屈10°に固定し下腿長の30%位置の腓腹筋内側頭を抽出した。image Jを用いて、異なる3点の羽状角・筋束長を計測し平均値を算出した。底屈筋力はCYBEX NORMを用いて計測した。 RPWはSTORZ MEDICAL社製 マスターパルス MP100を用いて、腓腹筋の伸張部位に2000発(R15/1.5bar)、筋腹全体に2000発 (D20/1.5bar)照射した。 検討項目は、Yバランステストのリーチ距離、膝伸展位および屈曲位WBLT、羽状角・筋束長、筋力の最大値と平均値 (角速度60°/s、180°/s)とした。 統計解析はWilcoxonの符号順位検定を用いて、各検討項目をRPW照射前後で比較した。有意水準は5%未満とした。 【結果】 RPW照射後で、Yバランステストは前方が68%から71%へ、後内側方向が84%から87%へ有意にリーチ距離が延長した (p<0.05)。WBLTは膝伸展位が37°から40°へ、屈曲位が39°から41°へ有意に拡大した (p<0.05)。羽状角は12.1°から13.1°へ有意に拡大し、筋束長は7.8cmから7.2cmへ有意に短縮した (p<0.05)。筋力は、最大値・平均値ともに有意差はなかった。 【考察】 RPWを照射することで、皮膚-皮下組織-筋間における滑走性が向上し、筋繊維への伸長負荷の減少に伴い、羽状角の拡大と筋束長が短縮するとされ、足関節背屈可動域が拡大するとされている。本研究もこれらを支持する結果となった。 Yバランステストは、WBLTの拡大に伴って前方と後内側方向のリーチ距離も延長したのではないかと考える。 今回、腓腹筋に対してRPWを照射することで、組織間の滑走性向上とWBLTの拡大、Yバランステストによるリーチ距離が延長することでパフォーマンス向上の一助になる可能性があると考える。また照射後でも筋力は変わらないことを踏まえると、スポーツ現場におけるコンディショニングツールとしても有効になる可能性がある。 【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に準拠し、対象者に対して本研究の趣旨及び方法、結果の取り扱いについて 十分な説明を行い、同意を得た上で実施した。