九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: O16-2
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セッションロ述16 測定・評価
下肢荷重計を用いた部分荷重フィードバックの有効性
寺井 一樹佐藤 亮中野渡 達哉
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抄録

【はじめに】 下肢骨折などの運動器疾患において患側荷重量を部分荷重(以下、PWB)から開始することがある。PWBの目的として、骨や軟部組織の治癒を適切に行うため、またインプラント骨折や再骨折を減少させることがあげられる。当院ではPWBの指示があった患者様に対し、体重計を用いて視覚的にフィードバック(以下、FB)しながらステップ練習や歩行練習を行っている。しかし近年、荷重センサーを搭載しタブレットでFBできる靴型下肢荷重計に関する報告も増えている。今回は、下肢荷重計「そくまる」(以下、そくまる)を使用し、体重計を用いてFBする方法と比較しPWBのFB効果に差があるのか検証した。そくまるは靴にセンサーを貼り、タブレットと連動することで荷重を掛けた際に視覚や聴覚で即座に荷重が確認できるものである。 【対象と方法】 対象者は当院スタッフ20名、平均年齢30±7.3歳。理学療法士(以下、PT)12名、作業療法士(以下、OT)6名、言語聴覚士(以下、ST)2名。そくまるの左側にセンサーを付け、左片脚立位の荷重量を総体重とした。対象者は、平行棒内両上肢支持の立位から、左下肢を振り出し、右下肢を振り出す1ステップ時の左下肢への荷重量を計測した。PWB課題は体重の2/3とし、荷重練習は、そくまるを装着し体重計の目盛りを見ながら練習する方法 (以下、体重計法)とそくまるを装着しタブレットのグラフや警告音でFBを受けながら練習する方法 (以下、センサー法)の2種類を行った。足部の条件を同一にするために体重計法においても、そくまるを装着して計測した。体重計法、センサー法とも10回ステップ練習を行い、2分間座位で休憩をとり、再度1回FBなしで左下肢へのPWBを行い、その際の最大荷重値を測定した。両測定は1日休息を挟んで行った。測定した最大荷重値を総体重で除してPWB率とし、目標荷重率を引いた数を誤差量とした。被検者の総体重にバラツキがあるため、その誤差量をそれぞれの目標2/3PWBで除して100を乗じた値(以下、誤差率)で統計処理を行った。20名の体重計法とセンサー法の差はT検定、PTおよびOTの体重計法とセンサー法の差はマン・ホイットニーのU検定を用い、有意水準は5%未満とした。 【結果】 全体の誤差率は、体重計法197.0±55.7%、センサー法では98.9±15.7%となり有意差がみられた(p<0.05)。各職種の誤差率(体重計法/センサー法)は、PTは177.7±35.4%/93.5±8.3%、OTは218.0±56.3%/108.3 ±16.1%となり両職種とも有意差がみられた(p<0.05)。STは249.1±77.6 %/103.1±26.1%であったが対象が2名であり統計処理は行っていない。 【考察】 今回、2/3PWB課題において、体重計と下肢荷重計を用いたFB方法を比較した結果、下肢荷重計を用いる方法が誤差率は小さかった。下肢荷重計では、タブレットを用いるため、視覚と聴覚を中心に即時にFBが可能であり、メモリ等を見る際に目線を下げる必要がない。一方で、体重計では、FB時に体重計のメモリを見る必要があり目線を下げなければならず全体的に屈曲傾向となり、姿勢の違いも誤差率の差の要因のひとつと考えられる。またSTについては統計処理を行っていないが全職種で誤差率は改善し、PWB練習とプログラム内容の関連性が低い職種ほど、体重計法の誤差率が大きく、センサー法での誤差率の改善幅が大きかった。PWB練習を適切に進め歩行を獲得していくことは、荷重の学習また再骨折などの予防には必要不可欠な要素である。今回の結果より、PWB練習に下肢荷重計を使用することは、患者により有効な方法となることが示唆された。 【倫理的配慮】 ヘルシンキ宣言の規定に従い実施し、対象者に個人情報の取り扱いに関して説明を行った上で同意を得た。

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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