九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: O17-3
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セッションロ述17 骨関節・脊髄5
大腿骨転子部骨折に対して、TFNAを使用した症例(セメント群と非セメント群)での端坐位開始・歩行開始期間の検討
坂本 大和伊藤 雅史樋口 健吾
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抄録

【目的】当院では2020年11月から大腿骨転子部骨折の症例に対して、TFNA (DePuy Synthes社)が使用されている。セメント使用が開始されてから、術後の疼痛が軽減し早期離床が行える症例を経験した。そこで、本研究では、大腿骨転子部骨折に対して、TFNAを使用し骨折観血的手術を施行した症例をセメント群と非セメント群に分けて端坐位開始・歩行開始までの期間に差があるのかを明らかにすることを目的に行った。 【方法】対象は2020年11月から2023年2月までの期間に、大腿骨転子部骨折に対して、TFNAを使用し骨折観血的手術が行われた症例を対象とした。除外基準は、死亡、複数骨折、合併症の併発した症例とした。電子カルテより、年齢、性別、病前自立度、転帰先、端坐位開始と歩行開始までの日数を調査した。対象者を、セメント群と非セメント群に群分けしEZRを用いて統計解析を行った。年齢・端坐位開始・歩行開始までの日数を対応のあるt検定、性別・病前自立度・転帰先をFisher’s exact testを用いて解析を行った。有意水準は5%とした。 【結果】対象者のうち、除外基準に該当しなかった全49例を解析対象とした。歩行開始までの日数に関しては、病前より歩行困難、術後荷重制限の指示があった症例を除いた全27例を解析対象とした。セメント群は34名 (11名)、非セメント群は15名(16名)であった (歩行開始までの解析対象者の内訳を記載)。セメント群では女性が有意に多い結果となった (セメント群:女性33名・男性1名、非セメント群:女性8名・男性7名、P<0.05)。また、年齢、病前自立度、転帰先、端坐位開始・歩行開始までの日数にはセメント群・非セメント群での有意な差は認めなかった。 【考察】セメント群において女性が有意に多い結果となった。兼田らの報告によると「Cemented TNFAは骨質の悪い症例が良い適応1)」とされている。また、骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインでは「骨粗鬆症の男女比は女性が男性の3倍の割合で多い2)」とされている。以上の点から、セメント群では骨粗鬆症である者が多いと予想され、女性が有意に多い結果となったのではないかと考える。また、本研究の最も着目した点である、端坐位開始・歩行開始までの日数において、有意な差は認めなかった。兼田らの報告によると「セメント補強型髄内釘の現時点での有用とされるのはカットアウトの抑制と術後疼痛の緩和における早期離床を可能とすること3)」とされている。この点から、セメントを使用する事で疼痛が緩和され、軽症であると予想される非セメント群と比較しても早期離床・歩行開始までに差がなかったのではないかと考える。 【結論】骨セメントを使用する事で疼痛が緩和され早期離床へと繋がる可能性が示唆された。 【参考文献】1) 3) 兼田慎太郎 整形外科と災害外科 72:(2)256~261、2023 「大腿骨転子部骨折に対するセメント併用TNFA骨接合術の短期成績」 2) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版 【倫理的配慮】本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には説明を行い同意を得た。また、本研究は当院の倫理委員会の審査を受けて承認を得ている (承認番号:K2024001)。

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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