九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: P9-4
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セッションポスター9 呼吸・循環・代謝
当院の早期離床・リハビリテーション加算病棟における理学療法士の活動報告~非侵襲的陽圧換気患者に着目して~
辻 希代子納富 里美市丸 勝昭有馬 浩史三溝 慎次
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抄録

【活動目的】当院では2019年より集中治療室 (Intensive Care Unit:以下ICU)において早期離床・リハビリテーション加算制度 (以下早期離床リハ加算)を導入、算定を開始している。 2022年には対象患者の退室時離床状況を調査するために、集中治療室活動度スケール (Intensive Care Unit Mobility Scale以下:IMS)を当館で作成している早期離床・リハビリテーション実施計画書に導入した。当院は主に急性期の病態に対して非侵襲的陽圧換気 (以下:NPPV)を用いて人工呼吸器管理を行う患者が多い。NPPVと理学療法に関した著書は、慢性期疾患やALS等神経疾患で触れられているものが多いが、急性期のNPPV患者の報告は少ない。 今回、ICU入室時から集学的管理を要し、NPPV管理患者のICU入室時の状態及び退室時の離床状況を調査したためここに報告する。 【活動内容】2019年6月1日から2023年6月30日までに当院ICUにおいてNPPV管理状態または管理目的に入室した患者を対象とした。除外基準は未成年、入室数時間後に死亡、早期離床リハ加算終了後に個別リハビリ料算定へ移行しなかった例、経過途中に経口挿管または気管切開術が必要となった44例を除外した。約5年間で106例がNPPV管理を要して入室し、基準を満たした62例の調査を行った。調査項目は年齢、入室時P/F比、入室時SOFAスコア、退室時IMSとした。統計処理は,退室時IMS5点以上を車椅子移乗可能群(以下:車椅子可能群) 、IMS4以下を車椅子移乗不可能群(以下:車椅子不可能群)の2群に分類し、Mann-WhitneyのU検定で比較し、有意水準は5%とした。以下に各調査項目の統計解析結果及び中央値を記す。NPPV管理期間(p=0.02)とSOFAスコア(p=0.03) に有意差を認めた。車椅子可能群は32例(男性25名/女性7名,年齢;範囲65.5~83.5歳)、車椅子不可能群は30例(男性23名/女性7名、年齢;範囲72.2~86.0歳)となった。 NPPV管理期間は(車椅子可能群/車椅子不可能群)2.0日/3.0日、入室日数は4.0日/4.0日、SOFAスコアは5点/6点、入室時P/F比の中央値は170.7/212.7であり、入室時の酸素化障害の程度は退室時の動作能力に影響しないことが示唆される。実際にNPPV管理患者では、症状が落ち着いた状態では経口挿管中患者に比べ、より苦痛が少なく、最小限のマンパワーで早期離床が可能となる。離床内容は当館で作成した早期離床プログラムを指標とし、体重測定やトイレ移動、整容等を目的とした課題指向型練習を導入し、多職種と協同して個々に合わせたポジショニングや早期からの患者指導を実行している。 【活動経過】離床が進んだ症例では比較的早期から歩行練習が開始でき、経口摂取による栄養管理も可能となり自宅退院に至った症例は約半数であった。近年では救急外来受診直後に蘇生処置拒否(Do Not Attempt Resuscitation:DNAR)を確認することが多く、NPPVを選択する例もある。また、令和4年度診療報酬改定に伴い、当院救命センターでも早期離床リハ加算算定を拡充した。より早期で安全な離床内容を提供できるようにプロトコルの整備を行っていくことが重要と考える。 【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に基づき、当院倫理委員会より承認を得た書面である。また、診療録情報は「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針研修会」を遵守して取り扱った。

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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