九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
セッションID: P11-1
会議情報

セッションポスター11 義肢装具
脳卒中片麻痺患者の下肢装具に対する当院の取り組み 第二報
〜装具相談窓口導入による小都市の装具格差是正を目指した取り組み〜
野﨑 潤一郎萬代 陽介
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キーワード: 生活期, 下肢装具, 装具格差
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抄録

【はじめに】当院の脳卒中片麻痺入院患者の下肢装具に対する取り組みを2022年に報告した。2023年からは、装具製作者及び生活期の下肢装具使用者のフォローアップを目的に"装具相談窓口"を開設した。また、久米は同じ装具使用者であっても装具に関する支援が受けられる人と、そうでない人では、生活に格差が生まれるとし、これを「装具格差」と定義している。今回、人口約6万人の小都市での窓口開設後の経過と結果、今後の課題について考察を交え報告する。 【経過】2023年に当院で装具を製作し退院した患者へ"装具手帳"の配布を開始し、"装具相談窓口"を開設した。窓口開設にあたり、院内のポスター掲示、当院ホームページに窓口開設の案内を掲示、当法人の介護保険部門のリハビリテーションスタッフ(リハスタッフ)に窓口開設の案内を行い、訪問看護ステーションのケアマネジャー(以下CM)に対し窓口開設の案内と下肢装具に関する研修、地域の医療、介護スタッフに向けた研修会を開催した。また、リハビリテーション部のSNSにも案内を投稿した。 【結果】2023年3月~2024年2月で18件の相談があった。内容は、下肢装具再製作希望7件、ベルクロの劣化や破損4件、装具フィッティングに関する相談2件、下肢装具滑り止めの剥がれ1件、足継手の角度調整1件、下肢装具以外の補装具の相談3件であった。相談者は、在宅部門のリハスタッフ10件、生活相談員(以下MSW)4件、患者または家族が4件だった。下肢装具に関する相談者の来院手段は、14名のうち、自立歩行7名、介助歩行3名(リハスタッフ付き添い)、車椅子(家族、施設職員付き添い)4名であった。また、生活場所は自宅12名、施設1名、病院1名であった。 【考察】当院の相談窓口への依頼者は在宅部門のリハスタッフ、MSW、患者またはその家族であった。リハスタッフからの相談が多い要因は、普段から下肢装具に接する機会があることが考えられる。笠井らは、生活期の装具ユーザーに携わるPTへの教育の必要性について述べている。また、阿部らは、生活期の脳卒中患者に関わる機会が多い職種としてCMを挙げている。これらのことからもCMだけでなく、生活期に携わるリハスタッフへの指導支援継続の必要性があると考える。また、患者や家族からの相談に関しては、患者本人が相談窓口の情報を得て来院もしくはその家族が情報を得るなど他者による支援があることで相談に繋がっていることが分かった。相談窓口に来院した患者の多くは移動手段が歩行であり、車椅子を移動手段とした患者には支援者が同伴していた。久米は、装具格差が起こる原因には個人因子だけでなく、装具ユーザーをサポートする人を有しているか、医療、介護、リハビリ従事者の知識不足や認識の違いを挙げている。今後は、歩行を移動手段としない、装具の自己管理が困難なユーザー、支援者のいないユーザー、自力での来院が困難なユーザーやそのユーザーに関わる施設職員に対する相談窓口の認知拡大、支援方法の検討、実践が必要だと考える。 【倫理的配慮】本調査は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に則り、個人情報データの匿名処理を行い、個人情報保護に十分に配慮し行った。

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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