九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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安静立位における足圧中心と足圧分布
*宮崎 至恵森田 正治甲斐 悟梅井 凡子中原 雅美山川 志子渡利 かずお吉本 龍司村上 茂雄高橋 精一郎
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p. 136

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抄録

【はじめに】
 近年日本人の直立位重心点が後方偏移しているといわれている。1960年平沢らの成人対象の調査では踵から足尖までを100とした場合、重心点が踵から平均47%の位置にあったが、1996年に実施した阿久根らの女子大生を対象とした調査では、400名の平均重心点は39.2%であったと報告している。今回フットプリント(Zebris社製)を用いて静止立位時の足圧中心(Center of Pressure以下COP)を測定し、かつ足圧分布図を5群に分類した。COPと性別、およびCOPと足圧分布パターンの関連性について若干の知見を得たのでここに報告する。
【対象】
当学院の学生のうち整形外科疾患がなく調査に同意した学生122名。男性62名、平均年齢24.7歳。
【方法】
フットプリント上で30秒間静止立位をとらせ足圧中心の軌跡を計測し、足圧分布図をデジタルカメラで撮影した。フットプリントの画像から最も滞在時間の長かったCOPの位置を平均COPとし、足長を100としたとき平均COPの位置が踵から何%にあるかをCenter of Gravity値(以下G値)とした。またG値40を境界値として性差の有無を調べた。足圧分布図を圧分布の違いからI群-踵中心、II群-踵中心で一部中足骨、III群-踵と中足骨、または踵と足趾、IV群-踵、中足骨そして足趾で圧分散、V群-中足骨と足趾の5群に分類した。属性の情報収集や足長計測は事前に実施した。統計学的手法としては性別によるG値の比較Mann‐WhitneyU検定を用いた。またG値を40以上群と未満群に分け、性別での違いを見る方法にはPearsonのカイ2乗検定を用いた。足圧分布の違いから分類した5群とG値の関係は一元配置分散分析後、多重比較を行った。統計学的有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
G値は平均42.6であった。男性の平均G値は43.9、女性は41.2であり、有意差がみられた。G値40未満群は44名(36.1%)であり、男性16名(男性全体の25.8%)女性28名(女性全体の46.7%)であった。カイ2乗検定の結果、有意差がみられた(p=0.016)。
また、足圧分布の各群に相当する対象者数と平均G値はそれぞれI群47名(男性19名、女性28名、以下同順)37.7、II群28名(15/13)41.5、III群13名(10/3)45.2、IV群29名(15/14)48.8、V群5名(3/2)53.0であった。G値はIIとIII群間、IIIとIV群間、 IVと V群間以外の群間で有意差がみられた。
【考察と結論】
 今回の測定結果よりG値の平均値が42.6であったことから1960年代よりも静止立位での重心点の位置が後方に偏移していることが確認できた。さらにG値が40未満である人は全体の36%以上を占めていることから、重心点が後方にある人が多いことがわかった。また性差においては、G値が40未満の割合が男性に比べて女性が有意に大きかったことから女性の重心点がより後方にあるといえる。足圧分布とG値の関係については、5群間での比較において多くの群間でG値に有意差がみられたことは分類に妥当性があったと考えられる。また群間に差の無いものもあり、G値が高くなると足圧分布での分類とは関連性がなくなる傾向もみられた。Gに関して群間に有意な差があったことから足圧分布図よりCOPの位置をある程度予想することが可能であると考える。とくにG値が低値であるか、すなわち重心が後方にあることを簡易に調べるには足圧分布による型で判断できる。今回の調査で静止立位時の重心点が後方へ偏移していることは確認できたが、女性にその傾向が強いことやG 値に個人差が生じる因子として、スポーツ歴あるいは履物や生活習慣、そして世代間格差などが何らかの影響を及ぼしているのかについて研究を行なっていきたい。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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