九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第26回九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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生涯学習システムの動向(第3報)
-第2報を踏まえての大分県での取り組み-
*工藤 義弘高橋 知良加藤 強竹村 仁山下 伸一稗田 増美阿部 孝彦平尾 逸人中野 将行安藤 真次池田 奈美子折岡 加代子三木 征博川口 織江後藤 裕美
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p. 30

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抄録

【はじめに】
 1997年に社団法人日本理学療法協会は「生涯学習システム」をマスタープランの中に組み込み、会員へ打ち出した。定期的に単位を取得していくことで、協会会員の知識や技術における資質向上が目的である。本検討は2005年度の単位更新の前年時点として大分県内における生涯学習システムの動向について第2報を踏まえ考察することを目的としている。
【方 法】
 第1に、大分県の症例検討について行っている試みについて述べる。第2に2003年5月現在において、新人教育プログラム履修中で登録から1年を経過している2003年度から過去10年間の1993年まで、症例検討?の未履修状況に注目して登録年度別に分析した。第3に生涯学習システムに対する理解と意欲アンケート調査(第2報)から出た問題点を症例検討?の履修状況に加味させた。第4に生涯学習基礎プログラムの単位更新の啓発についての取り組みを述べ、第5に日本理学療法士協会の統計データーを加えることで、啓発効果と現在大分県の単位更新者がどのような状態にあるのかを調査した。
【結果および考察】
 「生涯学習」は「教育」とは違い、自ら主体的に学ぶものであり、いかに自ら「その気になるか」がポイントであると考える。強制的に行うと主体的な学習としての意味を持たなくなるからである。生涯学習部として工夫することで、受講者が主体的になれるように目標を持っている。第1に、大分県の症例検討について行っている試みについて述べる。昨年度の症例検討は発表形式と会場に変化を試みた。発表形式については、発想を転換し、通常と逆、つまり原則的に発表者はレジュメ資料で統一し、例外的にパワーポイントでのプレゼンテーションで行った。会場については「寺子屋」のように和室で参加者が膝を突き合わせて座談会風に、和室2部屋、研修室1部屋の合計3室の分科会形式で行った。補足として単位の認定形式において会場までの物理的距離と、症例検討での発表を促進する意味で大分県を6つに分けた各ブロックでの症例検討会での発表を単位として認めている。第2に症例検討?について、新人プログラム履修中で症例検討?の未履修割合分析した1993年度登録(以下年度) 94年度57.1% 95年度77.7% 96年度84% 97年度100%  98年度95.6% 99年度78.2% 2000年度74.1% 2001年度61.9% 2002年度58.9% 2003年度 82.8%という結果であった。この結果から新人教育プログラムが修了しない理由として症例検討?が残っている結果になる。第3に生涯学習システムに対する理解と意欲アンケート調査(第2報)から出た問題点を症例検討?の履修状況に加味させた。第2報アンケート結果である「プログラムを理解するにつれて履修意欲が低下する」「早い時期ならば、履修意欲が高い」という結果を加味して、本年度より新規登録者に「3年以内に症例検討?を履修する」というルールを適応することとなった。さらに10年経過しても修了しないという問題点に対しての解決方法として、登録から9年目・10年目の方への個別連絡を行っている。さらに、あと一歩で修了しそうだけども「間に合わない」という方からの問い合わせに対して近県講座情報を提示している。生涯学習システムの制度を厳しくするよりも、誰もが単位を取得しやすい方向へ進めること、つまり思い直した時に再出発できる機会が必要である。「必須教育プログラム(仮称)」はよいチャンスになると考える。第5に日本理学療法士協会の統計データーを加えることで、啓発効果と現在大分県の単位更新者がどのような状態にあるのかを調査した。生涯学習基礎プログラムにおいて2000年の更新ができなかった方への対応として、大分県の会員向け機関紙「あおぞら」や情報誌・各研修会・会議の機会に「2003年12月までに9単位以上を履修し協会本部へ手続きを行えば可能である。」と具体的なアナウンスメントを行った。日本理学療法士協会の統計データーを加えることで、現在大分県がどのような状態にあるかについては以下に示した。A県2000年度更新者(以下00年)64名、2003年度更新(以下03年)10名、合計(以下計)74名。B県、00年57名、03年2名、計59名。大分県、00年31名、03年10名、計41名。C県、00年22名、03年5名、計27名。D県、00年12名、03年8名、計20名。F県、00年2名、03年1名、計3名。G県、00年0名、03年1名、計1名。であった。最後に、学習過程では,時間,労力,経費などを必要とするのは当然であるが,基本的には自己の成長・成熟のためであることを考えれば,それは貴重な投資となる。 理学療法士は,他者を教育・指導する場合,その前提条件として,自らが学ぶ姿勢(self-education)を失ってはならない。 われわれは、「このシステムをうまく利用して自己啓発の場として,貴重な機会としてとらえる。」という環境を提供したい。

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© 2004 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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