九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第29回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 124
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昼食後に見当識障害を示す認知症高齢者に対するアプローチ
~私は,何でここにいるんでしょう?~
*上城 憲司堀川 晃義
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抄録
【はじめに】
 重度認知症デイケア(デイケア)では,昼食後に不穏になる利用者が多い.それは,見当識障害のある認知症高齢者が休憩時間を上手く使えないことで起こる反応であると推察する. 筆者の疑問は,なぜ,昼食後に不穏行動が起こるのか?やアプローチをすることでその頻度が減少するのではないか?である.
【目的】
 本研究の目的は、昼食後に見当識障害を示す認知症高齢者の行動を観察し,なぜ,昼食後にそのようなことが起こるのかを推察することにある.また,その訴えの軽減を図るアプローチを実施しその効果を検討するものである.
【対象と方法】
 1.症例紹介:70歳代 男性 アルツハイマー型老年認知症.元来,短気な性格.旧制中学校卒業後,エンジニアとして働き,48歳時に交通事故に遭い仕事ができず辞めてしまう.その後は自宅で生活していたが,H15年頃よりもの忘れが出現し怒りっぽさが目立つようになってきた.2年後デイケアの利用が開始となった.
 2.作業療法評価:MMSE 13点,CDR 2,協会版認知症アセスメント「とりつくろい・穏やかタイプ」であった.独歩は自立,ADLも誘導や指示があればほぼ自立しているが,IADLはすべてにおいて介助を要する状態であった.
 3.介入:2週間を1クールとし4クール計8週間を調査期間とした.期間中,対象者がどのスタッフに何回「私は,何でここにいるんでしょう?」といった趣旨の問いかけを行うのかを測定した. A期(ベースライン)では,通常のデイケアプログラムの中で回数を測定し特に介入は実施しなかった.B期では,昼食後に一度「ここがどこで,なぜここにいるのか」をスタッフが説明した.C期では,説明をせず,運動(立ち上がり)プログラムに参加を促した.各介入は,ABACの順で実施した.
【結果】
 8週間(45日間)における対象者の問いかけの総数は73回(平均1.6回)であった.時間帯別では,食後が63%ともっとも多く,午前中よりも午後(94%)に集中していた.曜日別では,参加人数の少ない土曜日(土曜日のみ1単位で運営)がもっとも多く,スタッフ別では作業療法士が看護師の2倍問いかけられていた.介入においては,A期が平均1.36回,B期が平均2.17回,次のA期が平均1.86回,C期が平均1.09回という結果であり,Cの介入に効果があったと言える.
【考察】
 今回の症例は普段のデイケア活動では,ほとんど不穏な行動は起こさないが,スタッフのマンパワーの低下する昼食後には,絶えかねて行動を起こしてしまう.介入は結果的に,若干の効果を得たが,また更なる活動をあてがってしかその行為を減少させることができなかった.何かに集中しているときには,比較的に行動障害は起こりにくいが,それ以外の方法が見出せなかった点が今後の課題である.
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© 2007 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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