抄録
【目的】
大腿骨近位部骨折は、脳血管障害とともに寝たきりの主要な因子である。また高齢化に伴い年々増加している。当院回復期リハビリテーション病棟においても、患者数は少なくない。そこで本研究は大腿骨近位部骨折患者において自宅退院する患者と施設入所する患者では入院時・退院時のADL(Activities Of Daily Living:以下ADL)に差があるか否か。
また自宅退院するためには入院時および退院時どの程度のADL能力が必要であるか、を明らかにすることである。
【対象】
2006年4月から同年3月までに当院回復期病棟に入院し退院した大腿骨近位部骨折の患者51例を対象とした。内訳は男性9例、女性42例で、平均年齢は79.23±10.15歳。在院日数は65.11±23.59日であった。転帰については自宅退院38例、施設退院13例であった。
【方法】
退院時の転帰により、自宅退院した患者を自宅群、転院、施設入所した患者を施設群とした。ADL能力はFIM(Functional Independence Measure:以下FIM)にて評価し、入院時及び退院時に施行し比較した。
【結果】
FIMについては、入院時FIMは施設群が30点から112点、平均72.9点に対し、自宅群は60点から124点、平均107.5点と明らかに高く有意差を認めた。
退院時FIMの合計は施設群が34点から124点、平均80.3点に対し、自宅群は87点から126点、平均118.6点と明らかに高く有意差を認めた。
ROC解析によるカットオフ値は、入院時FIMは99点、その感度は79%、特異度は85%であった。
また、退院時FIMは108点、その感度は92%、特異度は85%であった。
【まとめ】
大腿骨近位部骨折患者において、自宅退院する患者と施設入所する患者では入院時・退院時ともにADLに差がある。
大腿骨近位部骨折患者のFIMは入院時99点、退院時108点以上であれば自宅復帰の可能性が高い。