抄録
【はじめに】
スポーツにおけるタイトネスと障害発生の因果関係は多数報告されている。しかし、スポーツ競技では競技の動作特性を考慮する必要があり、タイトネステスト(以下、TT)のみでは障害発生を予測する事は不十分と考えられる。我々は平成18年よりメディカルサポートを行っている地域少年サッカークラブにおいて、日本サッカー協会が推進するフィジカルテスト(以下、FT)を取り入れた測定を実施している。今回、FTおよびTTのデータを基に障害発生についての検討を行ったのでここに報告する。
【対象】
対象は、平成18年4月~平成20年3月までに地域少年サッカークラブに所属する小学生18名(年齢11.5±0.5歳、身長141±6.4cm、体重33.4±5.4kg)である。内訳は、6年生(以下、6年群)が9名、5年生(以下、5年群)が9名であった。尚、対象者には事前に研究の主旨を説明し、同意を得た上で測定を行った。期間中に障害を呈した選手は5名であった。その内、4名は5年生時の発生であり、それらを障害群(以下、S群)とし、コントロール群(以下、C群)はS群と同年齢である選手5名とした。
【方法】
FTの項目は、20m走・50m走・ロングキック・スローイン・バウンディング(以下、BD)・10mシャトルランを測定した。またTTの項目は、指床間距離(以下、FFD)・SLR・殿踵間距離(以下、BHD)・足関節背屈・股関節内旋を測定した。各測定項目において、6年群と5年群およびS群とC群での比較を行った。統計処理は対応のないt検定を用い、危険率は5%未満とした。
【結果】
1)6年群と5年群での比較は、FTではすべての項目において6年群が有意に高かった。TTではFFD・右BHD・左股内旋で6年群が有意に低い傾向を示した。
2)S群とC群での比較は、BDでS群が有意に高値を示した(p<0.05)。また、その他のFT項目では統計学的に有意差は認められなかったが、各項目の平均値はS群が高かった。TTでは左SLRでS群が有意に低値を示した(p<0.05)。
【考察】
学年間の比較では、FTとTTで有意差を示した項目があったが、6年時では障害発生がなく、今回はこれらの項目の関与は低かったと考えられる。S群とC群の比較では、BDでS群が有意に高値を示し、左SLRで有意に低値を示した。これらの障害発生に関与する要因として、少年期では骨端線の未閉鎖など身体的に未発達であること、個々の成長度と異なる過度な運動量、5年生という年代では技術的に未習熟であることが考えられる。また、少年期では骨と筋腱の不均衡から軟部組織の緊張が高くなると報告されており、軸足である左股関節の柔軟性低下が関与すると考えられる。よって、5年時ではTTが低値を示し、さらにFTでBDの数値が高い選手に対しては頻回に状態観察を実施し予防の必要があると考える。