九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 218
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在宅復帰に向けた患者・家族とのかかわり
~他部門との連携、家族への介助指導を通して~
*岩永 梨沙
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キーワード: 連携, 介助指導, 在宅復帰
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抄録

【はじめに】
近年の医療・介護保険診療報酬改定によりリハビリテーションの早期介入・早期在宅復帰が強く叫ばれている。その為にも、より質の高いリハビリテーションの提供とともに、医療・介護の連携・情報共有、また、早期在宅復帰を促すにあたって患者・家族の不安軽減への精神的アプローチ・介助指導にも力を入れていく必要がある。今回、一症例を通して、その有用性を感じ、円滑な在宅復帰を図れたのでここに報告する。
【症例紹介】
82歳女性、主婦、農業、右利き
H19.12.22脳梗塞発症、発症時左Br.Stage:I~II、重度感覚鈍麻、見当識良好、HDS-R29点、注意障害、ペーシング障害、左USN等高次脳機能障害が著明
主訴:「半身不随になった。首から下がパーやけん」
【経過】
H19.12.24Bed SideにてPT・OT・ST開始
H19.12.29端座位訓練開始
H20.1.8車椅子に移乗しリハ出し開始
H20.1.10歩行訓練開始
H20.1.17家屋調査実施
H20.1.29回復期病棟へ転棟。左Br.Stage:II:II:III。歩行はシューホーン・4点杖を使用し中等度介助。高次脳機能障害の影響が大きく、全般的に動作が乱暴で突発的。自己のリスク管理ができず、転倒の危険性が高い状況
H20.3.8要介護3認定
H20.3.25在宅スタッフと同行で外出訓練実施。その後自宅での歩行訓練・家族への介助指導を目的として、週に一回外出訓練実施
H20.4.12病棟内の移動手段を車椅子から歩行へ変更
H20.4.24退院前カンファレンス
H20.4.29退院
【結果・考察】
本症例の主訴として、疾患や自身の状態に対してネガティブな発言が多い状況であった。しかし、早期から在宅復帰を想定したかかわりをもち、患者にリハビリの進行状況の説明・フィードバックをしていくことで「一人で歩けるようになりたい、自分でトイレに行きたい」とニーズが出てくるようになった。そして歩行状態の安定化に伴って、病棟スタッフへの介助指導・リスクの説明を十分に行い「しているADL」でも歩行を導入した。同時に、リハビリ室内での家族介助下の歩行訓練や頻回な外出訓練を行うことにより、実用的な歩行能力の向上へとつながり、本人のモチベーションを一層向上することができた。また、家族は退院前に介助の練習が多くできることで、患者本人との意識統一や在宅復帰に向けての不安軽減を図ることができた。さらに、初回の外出訓練の段階からケアマネージャーや訪問リハのスタッフ、福祉用具の業者などが介入し、退院後の具体的なサービスを想定したアプローチが早期からできたことも、家族の不安を軽減できた大きな要因となった。
【終わりに】
本症例を通して、理学療法士としてのかかわりだけでなく、患者・家族・他部門とのスタッフとの「人と人」とのつながりや信頼関係が重要であることを再認識できた。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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