九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 217
会議情報

在宅復帰に繋ぐ家族指導のあり方
6つに段階付けた家族指導の紹介
*中村 雅司吉田 大地黒瀬 一郎辛嶋 美佳佐藤 浩二衛藤 宏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
 我々は家族が在宅復帰を望むものの、患者の疾病や能力への理解が低く、かつ介助量が多い場合でも、在宅復帰に繋げるよう家族への関わりを6段階に分け実施している。今回、この段階付けた家族指導法について症例を交え紹介する。
【6段階の指導方法】
第1期:家族が訓練を見学し病態への理解を図る。
第2期:家族が訓練を見学し病態に合わせ能力の理解も図る。
第3期:身近な動作の介助要領の習得を図る。
第4期:介助量や難易度の高い動作、また諸動作を一連の動作として介助要領の習得を図る。
第5期:当院併設の在宅自立学習施設にて排泄動作等の介助要領を習得し在宅生活のイメージの再構築を図る。
第6期:セラピスト見守りの下、一連の動作を遂行し動作の修正や再指導、確認を行う。
【症例紹介】
 68歳、女性、夫と2人暮らし。H19年3月2日脳梗塞発症し、6月1日当院回復期リハ病棟入院。初期時B.I.0点。夫より在宅復帰への強い希望が聞かれた。目標は車椅子主体であるが一部限定的な歩行を夫の介助にて可能としての在宅復帰とした。なお、在宅復帰に向けては麻痺や高次脳機能障害を考慮して退院後4ヶ月程度は近隣の施設に入所し外泊・外出を繰り返して在宅復帰を目指すこととした。第1・2期では、夫が機能や能力向上に固執し、病態の理解は不十分であった為、訓練の見学と夫への説明より実施した。3ヵ月後、夫の病態や能力への理解が図れ介助に自ら関わろうとする姿勢が見られるようになった。第3期へ移行し、起居・移乗の介助指導を実施し動作要領獲得させた。4ヵ月後、第4期では歩行の介助指導も導入し、夫は安全に介助歩行が可能となった。以後、第5・6期と順調に進み、退院に向け在宅自立学習施設にて在宅生活のイメージ再構築の促しと在宅にて必要とされる動作習熟・確認へと展開し、約6ヶ月にて目標達成した。最終時、病棟内ADLは予後予測通り車椅子主体であるが、夫の介助にて四脚杖歩行や段差昇降等が可能となった(B.I.55点)。現在退院後約3ヶ月が経過しているが、施設から週末には外泊・外出を行っており自宅退院に向け最終段階となっている。加えて、夫の介助の下安全に過ごせていると確認出来ている。
【まとめ】
 在宅復帰を強く希望する家族においても、患者が重度の麻痺を呈したり重度介助を要す場合には不安を感じ在宅復帰に結び付きにくい事例に遭遇する。このような事例に対しては、家族の状況に合わせた柔軟な支援を行っていくことが重要である。今回紹介した6段階の家族指導方法は、身体・精神的負担を考慮し、家族が在宅復帰に向けた心の準備を行いつつ介助方法をセラピストと一緒に経験し、家族の主体性を引き出し、更には家族の抱える課題を他職種が専門的かつ多様にフォローするという点で大変有用であると考える。

著者関連情報
© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top