九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 34
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居室の片付けが出来るようになるための支援
*前川 麻美原 寛道
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抄録

【はじめに】
今回身辺自立活動への介入の一環として「居室の片付け」に対し、事例の障害特性を考慮した環境面への働きかけや、練習方法を検討し介入を行い変化が見られたため報告する。
【事例紹介】
A氏、30代、男性。診断名は先天性水頭症(痙性両麻痺)、てんかん、知的障害。
【評価】
身体機能:屋内の車椅子自走、歩行器歩行可能。床上は四つ這い、膝立ちで移動。
知的機能:WAIS-R(2006/9/11、CA31Y8M)より言語性IQ52、動作性IQ48、全IQ48。
社会機能:SM社会生活能力検査(2007/11/13)より身辺自立11Y6M、移動8Y4M、作業10Y2M、意志交換8Y4M、集団参加9Y4M、自己統制10Y11M。
コミュニケーション:意志の表出が苦手だが、日常会話は可能。
ADL:FIM95/126、BI70/100
居室の様子:服や本、カセットテープやCDなどが床に散乱している。たんすやロッカーも乱雑に物を詰め込んでいる。
居室の片付け:片付けに対する意欲は高く、片付けの必要性も認識できている。しかし実際は片付けの手順が分からず、手当たり次第に収納するため、居室全体を片付けるとなると多くの時間を要しなかなか片付けられない。
【目標】
床に散乱している物を所定の位置へ片付ける
【経過と結果】
片付けの様子から「どこまで片付ければいいか分からないのでは?」という仮説をたて、片付いた居室と散らかった居室の状態の写真を提示し、2枚を比較した。また片付いた居室の状態を視覚的に認識してもらい、どの状態まで片付けるのか目標を立てた。他にもたんすやロッカーに整理された状態の写真を貼り、視覚的に分かりやすい環境を設定し、居室でのロールプレイを行った。継続して取り組めるよう、週1回居室の状態を確認している。現在は写真を見ながらたんすやロッカーの部分的な片付けが可能となったため、OTは見守る程度である。
【考察】
事例は1)認知面の低さや経験不足のため、優先順位をつけて整理することが難しいこと、2)視空間認知の低さに伴い、空間を頭の中でイメージすることが困難であること、3)加えて記憶力の低さにより片付ける場所を記憶しておくことが難しく、同じ物を同じ場所に片付けることが困難といった障害特性が見られた。こういった障害特性が、片付ける順序をうまく組み立てることや、片付けるものと場所を系列づけてイメージすることを難しくしており、片付けられない原因なのではないかと考えた。そこで、今回はこの面を考慮してアプローチを行い、写真を見ながら片付けられるようになってきた。しかし、一方で新たに上着をきれいにたためず、結果たんすには収納できているが引き出しの中が整理できていない。上着に限られたのはたたむ工程が複雑で構成的なものが苦手な症例にとって困難であったことが考えられる。他にも上肢操作が不器用、たたむ場所を確保できない、意識の問題等様々な要素が考えられる。今後はこの面も考慮しながらアプローチを行っていきたい。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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