主催: 社団法人日本理学療法士協会九州ブロック会・社団法人日本作業療法士会九州各県士会
【目的】
高齢者に多い大腿骨頚部骨折では痛みによりADL能力は大きく左右されるという報告がある。当院臨床現場でも、歩行獲得を阻害する因子として痛みの要素は強いと考える。また、主観的ではあるが、肥満傾向にある患者ほど痛みが強い印象を持つ。今後の高齢化に伴い増加していくであろう症例でもあり、これからの治療方針へ反映させたいと考え、大腿骨頚部骨折を呈した患者の肥満と痛みの関連性について検討した。
【対象と方法】
当院入院中の大腿骨頚部骨折患者94名に対し(男性24名、女性70名、年齢25歳から98歳、平均年齢77.3歳)BMI・VAS・術式・歩行レベルなどの項目を調査した。VASについては荷重開始から1週間隔で調査、BMIについてはA群:18.5未満(以下Aとする),B群18.5から25(以下Bとする),C群25以上(Cとする)と3群に分けた。被検者94名中Aは32名、Bは53名、Cは9名である。それぞれの群とVASの関連性を一元配置分散分析を用いて検討した。統計学的有意水準は5未満とし、多重比較にはTukey‘sHSDtestを用いた。
【結果】
BMIとABC群とVASの間に有意差はなく、関連性は認めなかった。
【考察】
今回の調査においてはBMIとVASの関連性は認めなかった。この事により当初の「大腿骨頚部骨折を呈した患者で肥満傾向の人程痛みが強い」という仮説は否定された。
しかし、今回の調査の内訳を見るとBMI25以上の群の人数が94名中9名と少なく、今回の仮定を証明するには充分ではなかったと考える。また、痛みは主観的要素が強く、高齢者の被験者ではVASを測定するにあたり理解面で問題があった事なども結果に影響している事が考えられる。
【まとめ】
今回はBMIとVASについてのみ調査した結果であり、BMI高値の人数が増えた場合や術式での違い、歩行レベルでの痛みの差など比較・検討していかなければならない。さまざまな結果から少しでも今後の治療に活かしていきたいと考える。