九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 47
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TKA術後の在院日数に影響を与える諸因子
*松田 伊津香島袋 恵
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抄録

【はじめに】
 人工膝関節全置換術(以下TKA)施行症例において、臨床ではしばしば退院が遅延する症例を経験する。そこで今回、TKA術後の在院日数に与える諸因子について検討し、今後の改善点について若干の知見を得たので報告する。
【対象】
 対象は、H18年6月~H20年3月までに当院においてTKAを施行し退院となったTKA症例のうち、歩行に障害を来す中枢性疾患,他の整形外科疾患(対側膝TKAを含む)を有さない24症例(男性2名、女性22名、平均年齢74.0±4.17)とした。
【方法】
 対象者の術後在院日数は平均21.04±4.94日であり、退院までに21日以上要した症例を遅延群、21日未満を早期群とした。術後在院日数は、遅延群で24.83±3.47日、早期群で16.9±2.11日であった。遅延群13名、早期群11名に対して、1.BMI、2.退院時膝屈曲角度、3.退院時膝伸展角度、4.対側膝疼痛の有無、5.術後病棟内歩行開始時期の各項目を比較検討した。遅延群の術後在院日数と1.2.3.5.の各項目の相関関係を検討した。統計学的分析には、2群間の比較では対応のないT検定、Mann-WhitneyのU検定を用い、遅延群の術後在院日数と各項目の関連性にはSpearmanの順位相関係数を用いた。
【結果】
 2群間の比較では、1.BMI:遅延群29.54±3.9、早期群26.93±3.96、2.退院時膝屈曲角度:遅延群112.91±11.95°、早期群121.25±7.42°、3.膝伸展角度:遅延群-7.91±3.96°、退院群-4.58±3.96°、4.対側膝疼痛の有無:遅延群4名有り、早期群4名有り、5.病棟内歩行開始時期:遅延群9.0±3.9日、早期群6.0±0.77日であった。項目1.~4.において両群に有意差は認めなかったが、5.の病棟内歩行開始時期に関して、遅延群において有意に遅かった(P<0.05)。また、項目1.~4.においては術後在院日数と相関を認めなかったが、5.において相関を認め(P<0.05)、術後在院日数が長い群では、病棟内歩行開始時期が遅い結果となった。
【考察】
 今回、術後在院日数が長い群において、病棟内歩行開始時期が遅い結果となった。これは、術後の歩行獲得が遅れたことにより、早期のADL拡大・自立が図られず患者の退院に対する自信が低下することで、在院日数が長期化したと考える。また、術後歩行開始時期は機能面と有意差がなかったことから、歩行開始時期は各セラピストの主観的評価に依存していることが示唆される。そのため、今後の課題として、客観的な評価尺度を組み込んだプロトコールの作成を行うことが必要であると考える。

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© 2008 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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