九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 104
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外傷性肘関節脱臼に伴う肘関節側副靭帯損傷に対する一次修復術の治療成績
*佐伯 匡司井上 理恵神吉 真智子三穂野 大樹池田 優生中島 雪彦高橋 幸司田口 学中島 英親
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抄録
【はじめに】
 肘関節脱臼に伴う側副靭帯損傷に対し、骨折合併例は関節機能が障害されるため観血的治療が必要となる。また、不安定があれば修復が必要である。当院では不安定性の原因である靭帯及び筋群の修復及び早期リハが重要と考えている。今回、治療成績と回外制限を呈した症例を報告する。
【対象および外科的処置】
 2006年7月以降、肘関節側副靭帯修復術を行った15例。女性6例、男性9例、平均年齢34.7歳、平均経過観察期間は61.1週。肘関節脱臼単独が9例、骨折合併例は橈骨頭骨折2例、上腕骨内上顆骨折2例、尺骨鉤状突起骨折1例であった。当院ではMCL修復後内反ストレスにて外側不安定性を認める場合はLCL修復を追加している。11例にsuture anchorを用いて修復を行った。
【作業療法】
 術後シーネ固定後、1週以内にヒンジ付き装具装着下に可動域訓練開始。約40°の伸展制限から開始し3-4週かけて徐々に伸展制限なしへ移行した。装具の除去時期は平均6.0週、外来リハを平均12.1週行なった。
【結果】
 最終調査時の肘関節可動域は屈曲138°、伸展‐3.0°、回内68.3°、回外86°であった。握力は健側比87.1%であった。日本整形外科学会肘機能評価法(以下JOA スコア)は平均94.9点であった。DASHスコアの聴取が可能であった13例において平均3.3点であった。
【症例紹介】
 50歳代女性、転倒し左手をついて受傷。術中所見は内側側副靭帯前線維束をsuture anchorで縫合、後線維束は内上顆に縫合した。外側側副靭帯はsuture anchorを用いて縫合した。術後はシーネ固定、6日目より40°の伸展制限でヒンジ付き装具下にて可動域訓練開始、その時より装具内での回内位肢位が確認されていた。術後4週にて伸展制限を解除され、肘関節屈曲105°、伸展‐40°、前腕回外5°、回内60°であった。この時期より前腕の運動を積極的に開始した。術後3ヶ月で前腕回外30°であり、円回内筋の伸張性低下が制限因子と考えられた。術後4ヶ月にて円回内筋の伸張性低下はほぼ改善、術後5ヶ月での最終評価で肘関節屈曲140°、伸展‐5°、前腕回外90°、回内70°、JOAスコアは91点であった。
【考察】
 術後1週以内に装具着用下にリハ開始し、JOA スコア94.9点、DASH スコア3.3点と良好であった。Suture Anchor等を用いた靭帯修復による早期リハが肘伸展可動域の改善に重要と考えられた。回外制限を呈した症例では、術後の疼痛に伴い回内位の不良肢位をとっていた。回外運動を行う場合は、肘関節に外反ストレスが加わらない限りは肘関節の靭帯構造を考えると修復部への影響はないと思われる。セラピストが装具を除去して外反ストレスがかからないように注意しながらの前腕運動への介入が早期より必要と思われた症例であった。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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