九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 107
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肘頭骨折プレート固定術後の治療経験
*根路銘 祥子玉井 誠
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抄録
【はじめに】
 当院では,肘頭骨折に対する治療法の一つとしてロッキングプレートを用いた観血的整復固定術を行ってきた.プレートの強固な固定性は,早期の可動域訓練を可能とし,良好な治療成績を得ることが出来たのでここに報告する.
【対象】
 対象は平成17年3月以降,肘頭骨折新鮮例に対して観血的整復固定術を施行した5例である.症例は男性4例,女性1例.受傷時年齢は22~81歳(平均55.2歳)であり,受傷機転は転倒3例,交通事故2例であった.骨折型は単純骨折2例,粉砕骨折3例であり,1例に橈骨遠位端粉砕骨折の合併を認めた.術後経過観察期間は277日から729日(平均440日),作業療法実施回数は17回から104回(平均40.2回),在院日数は3日から29日(平均10日)であった.
【手術方法】
 全身麻酔あるいは局所静脈麻酔下に,腹臥位にて肘関節後面より侵入し,骨片の整復後固定を行う.固定機材はSynthes社のmetaphyseal LCPを使用.近位部を肘頭の形に合わせて適合させロッキングスクリューにて固定した.粉砕のあった3例には,オスフェリオンの充填を行った.
【術後療法】
 術後は,上腕部から前腕遠位にかけてバルギードレッシングによる圧迫包帯を行い,翌日より肩・手指の可動域訓練を開始.また,浮腫コントロールの為に患肢挙上位指導を行った.術後1週間にて圧迫包帯を除去して,肘関節の可動域訓練を開始.屈曲・伸展共に制限はつけず,防御収縮に注意しながら疼痛範囲内で実施した.術後2週から,軽度な動作より日常生活動作での患肢使用を指導.同時に,骨癒合状態を確認しながら段階的に筋力訓練や自重を使った伸張運動を実施した.
【方法】
 これらの症例について,経時的な可動域測定と日本整形外科学会肘機能評価成績・外傷(以下JOA score)を用いた治療成績の判定を行った.
【結果】
 全例において術後骨片の再転位は無く,良好な骨癒合を得た.肘関節可動域測定は,術後2週にて伸展平均-24°,屈曲平均123°であった.また,術後半年まで経過観察が出来た4例では,術後4週にて伸展-15~-35°(平均-23.8°),屈曲95~135°(平均122.5°),術後8週にて伸展-10~-25°(平均-16.3°),屈曲80~135°(平均121.3°).最終評価時,伸展5°~-30°(平均-15°),屈曲130~140°(平均137.5°)であり,比較的早期より良好な可動域を獲得しており,JOA scoreは,85~96点(平均91点)であった.
【考察】
 肘頭骨折に対する骨接合術では,Tension Band Wiring法(以下TBW)を使用する場合が多い.しかし,TBWの問題点として,Wireの刺激による疼痛の遷延や,固定強度の減弱による偽関節等の問題が挙げられる.一方,プレート固定法では,強固な固定力により,運動時の疼痛が早期に軽減されるため,積極的な可動域訓練を行うことが出来た.これにより,良好な可動域を獲得し,日常生活動作の向上や早期の社会復帰を得ることに寄与したと考える.今後,プレート固定法の利点を活かした術後療法を検討し,より良い治療を提供していきたい.
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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