九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 119
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生活機能向上につながる効果的な訓練手法の一考察
*塚崎 あゆみ出口 智美矢野 高正佐藤 浩二野澤 伸禎
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抄録

【はじめに】
 自発性が低下し廃用症候群を引き起こしていた症例の、生活機能を高める上で、趣味活動の導入がセルフケア能力の向上に繋がった。本症例を通して生活機能向上につながる効果的な訓練手法のあり方を考察する。
【症例紹介】
 80歳代女性。H20年3月発症の脳出血後遺症、右片麻痺。Br.stage上下肢・手指V。覚醒は浮動的で見当識の低下を認めた。また持続的注意の低下、状況理解の低下に加え、動作手順の組み立てが拙劣であった。セルフケアは全介助(B.I:20/100)であった。家族は娘と2人暮らし。日課は家事と共に毎朝のお寺参りや庭の手入れの他、趣味活動として詩吟・カラオケ・俳画や絵画であった。
【目標】
 4ヶ月で家族見守りのもと入浴を除くセルフケアが独歩・両手動作で自立し、病前からの趣味活動の一部が可能となっての自宅退院とした。
【経過:折り紙導入前】
 訓練は生活時間に即し排泄動作と食事動作の自立を目的に少量頻回な関わりから開始した。1ヵ月後には日中の排泄動作は移乗と下衣操作が見守り、食事動作は自立となり離床機会も確保された。しかし訓練へは消極的であった。そこで目標達成に向け、本人・家族と話し合いセルフケア訓練と併せて、病前趣味活動を行っていた時間帯に添って折り紙活動を訓練に組み込んだ。折り紙活動は話し合いの結果、本人の興味・関心が最も高かったこと、また麻痺の程度と高次脳機能障害の程度から遂行可能と判断したからである。以後は折り紙活動を訓練の中心に据え、この前後に排泄を促しその場で実際の排泄訓練を行うこととした。
【経過:折り紙導入後】
 折り紙導入後は排泄訓練の拒否はなくなり、導入1ヶ月後には排泄動作は声掛けにて可能となった。この頃より、折り紙活動の前には整容と更衣にも自発的に取り組むようになった。また折り紙に加え、ペーパークラフトとビーズ細工も取り組むようになり活動前には自身にて排泄を済ませ、身なりを整える(整容・更衣)姿勢が現れて、一日の活動として定着した。
 3ヵ月後の最終時には、見当識、状況理解の向上と動作手順の組み立ての改善により整容動作と更衣動作も自立し、結果として入浴以外のセルフケアは自立した(B.I 90/100)。退院先は、日中娘が仕事の間一人となる事からグループホームへの退院となったが、4月22日現在、退院先では一日を通し平穏に自立して過せている。
【考察】
 自発性が低下し何事にも消極的であった患者に対し、本人・家族としっかりと話し合い、本人の興味や関心を活かした活動を選択しセルフケア訓練と組み合わせたことで、セルフケア能力の向上に繋がった。このことから生活機能を高める上で、自発性が低下し訓練に消極的な患者に対しては本人の趣味や関心のある活動内容を探り、その活動を中心に据えて訓練を行うことは、一つの訓練手法として効果があると考えられた。

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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