九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 176
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意欲障害者に対するプールリハの有効性について
*村山  健一郎古田 大緒方  陽一郎尾田 憲彦沖園 秀次呉 聖能仲川 純代横山 信彦井手 泰之力丸 伸樹
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抄録
【はじめに】
 意欲低下はリハビリテーションの粗害因子である。最近我々は、意欲低下の著しい症例にプールリハを導入してADL改善をみた症例を経験した。意欲障害に対するプールリハの有効性について若干の考察を交えて報告する。
【症例及び経過】
 66歳主婦。平成13年より統合失調症と診断され、食事、トイレ動作以外は終日臥床していた。平成20年9月4日トイレ動作時に転倒して頭部打撲。9月8日意識障害出現し救急病院に搬入。頭部CTで右急性硬膜下血腫と診断、開頭血腫除去術を受けた。10月15日、リハ目的で当院へ転院したが、経鼻経管栄養、ADL全介助から改善せず。頭部MRIで水頭症を認めて、12月18日紹介元病院で脳室腹腔シャント手術を受け、12月26日、ストレッチャーで当院へ再転院となる。再転院当初、Br.stage(2-2-2)、体幹全体が伸展パターンに支配され姿勢反射異常が認められた。GMTにてSLRは0、上肢2レベルで寝返り・座位保持ともに全介助。FIMは20点であった。精神面でも消極的、依存的でADL訓練に対する意欲が低かった。平成21年1月23日には車椅子座位で食事自己摂取可能となったが、伸展反射の残存のため臥位にて膝の屈曲や体幹の回旋が行えず、立位を介助でとるも膝のロッキングと臀部の後方突出が著しく、訓練効果が進まない状況が続いた。1月27日よりプールリハ開始。陸上での訓練と比較すると、明らかに自力で立位をとろうとする意思がみられた。2月1日には陸上訓練でも平行棒把持、腋窩介助で立位保持可能となる。3月下旬には、軽介助で起立、屋内での歩行器歩行が可能となる。4月14日、プール内での起立動作・立位保持が見守りレベルとなった。4月20日時点のFIM評価は、初期の20点から51点と大幅に改善を示し、日常生活動作の介助量が著しく少なくなった。
【考察】
 本症例はプールリハを導入してからADLが大幅に改善を見せた。理由としては、水の浮力による荷重量の軽減や粘性抵抗による姿勢の保持により、「自分の足で歩く」という身体イメージの再獲得が容易になり、ひいては陸上での歩けるという自信を獲得したからであると考えられている。また、「溺れたくない」という自己生存欲求を賦活することにより訓練意欲の改善をもたらしたのではないかと考えられた。
【まとめ】
 プールリハは陸上では困難な立位保持や歩行獲得が容易であり、ひいては陸上での基本動作の介助量軽減を図ることができる。また、患者自身が「歩ける」という自信を持つ、あるいは「溺れたくない」という生存欲求をもつこと。すなわち患者の情動、意欲を揺り動かす効果も、プールリハの重要な効果である。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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