九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 187
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腱板断裂術後の予後を決定する因子の検討
Mclaughlin法と広背筋移行術
*杉安 直樹山下 導人内野 潔
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抄録
【はじめに】
 肩腱板断裂に対する観血的療法は、Mclaughlin法(以下M法)が最も頻回に実施されている。修復困難な場合、当院では広背筋移行術(以下LD法)にて良好な成績を得ている。今回、術後成績の比較を行い予後、理学療法施行時の注意点、反省等を検討したので報告する。
【対象】
 H.15.4~H.20.6までに当院で腱板再建術を施行した男性18例(18肩)、女性6例(6肩)、計24例(24肩)。M法19例(19肩)、LD法5例(5肩)。手術時平均年齢は60.8±8.5(45~71)歳。職種は漁業6例、大工6例、農業4例、その他8例。
【方法】
 等尺性筋力測定器MICROFET2による肩関節屈曲・外転90°・内外旋中間位の筋力(健側比;術側/非術側×100)、日整会肩疾患治療成績判定基準(以下JOA-S)を測定。術前と術後1年未満(短期)、以上(中期)を比較、さらにM法とLD法の比較検討。尚、本研究すべての対象者よりインフォームト゛コンセントを得た後に実施した。
【結果】
 (1)術前と短期・中期の比較 筋力:外旋筋は短期・中期で有意に改善。屈曲・外転・内旋筋は中期のみ有意に改善。JOA-S:短期は疼痛・日常生活動作・総点で有意に改善、中期はすべて有意に改善。(2)M法とLD法の比較 筋力:短期で外転・外旋筋ともにM法が有意に高値、中期で有意差なし。JOA-S:有意差なし。
【考察】
 石谷らは外転筋力比は短期では有意な回復を示さなかったが、外旋筋力比は短期でも有意に回復し、外転・内旋筋力よりもアウターマッスルの影響を受けないためと推察している。今回の結果はこれに近似していた。外転筋力は3ヶ月では有意な回復はみられないが、外旋筋力は3ヶ月で有意な回復を示し、術後1年で各筋力は正常に近づくと推察された。JOA-Sは9割以上を獲得し、復職率は100%であった。
 M法とLD法にて、信原らによると肩腱板断裂の予後は断裂端の最大径に左右されるとしている。今回の検討での術式選択は大・広範囲断裂はLD法であり、M法が予後良好と予測したが両者に有意差はなかった。LD法では、広背筋が棘上・棘下筋の働きを補完するよう機能変換した結果と思われる。また岡村らは筋電図解析から広背筋の機能転換がみられるのは術後5週間以後としており、今回の結果と近似していた。LD法の欠点として機能変換にかかる期間が腱修復術後の回復に比べ長いと思われた。術後リハヒ゛リテーションとして、M法では棘上筋を中心とした筋再教育、LD法では広背筋の機能変換を目的としたフィート゛ハ゛ックトレーニンク゛の必要性が示唆された。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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