九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 216
会議情報

栄養士と作業療法士の関わりの必要性について
~調理クラブを通して~
*上城 智美川本 愛一郎濱田 桂太朗神川 大輔増田 ゆい吉屋 光晴島田 美緒吉屋 素子
著者情報
キーワード: 調理, 食事, 連携
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】
 当社、運営の通所介護施設では、栄養士が調理クラブを実施している。通所介護施設での栄養士としての位置づけとして、単なる調理の指導だけではなく、自宅で作っている調理の仕方(動作)の把握、疾患との関連する食事の把握を目的としている。今回、調理クラブを通して栄養士と作業療法士(以下OT)の関わる必要性について、若干の知見が得られたので、ここに報告する。
【対象者】
 本人による調理希望の意思のある方、又は自宅での調理が必要な方に対して、調理クラブへの参加の意思を確認し、参加の意思表示のあった方を対象とした。
【活動内容】
 1クラブにつき月1回の調理クラブの実施。メニューは、調理実施の前週に栄養士とメンバー(4名)で、その時々の旬な物を使い、季節感を出す。野菜・肉・卵・魚等、バランスよく使うメニューを話し合いにて決める。材料費は、500円/月徴収する。OTは、メンバーの方の身体的評価を行ない、動作方法や道具の操作能力、認知面の注意すべき点について、栄養士に伝える。
【結果および考察】
 通所介護施設の利用者の多くは、糖尿病や高血圧などの生活習慣病をもっている。それらの疾患は、栄養バランスなどの管理が大切であるが、毎日の食事は自宅で摂ることが多く、自己管理しなければならない。しかし栄養面について利用者は、十分な知識をもっていない。また利用者に食事状況を確認しても食事の摂取量について大まかに話すことが多い。しかし栄養士が調理クラブに関わることで、調理中に利用者の味付けや好みがわかり、また利用者同士の会話は、調理の話が多く自宅での食事状況やその人の食に対する考え方がみえてくる。調理クラブに栄養士が関わることで、栄養指導(塩分、糖分、脂肪又は低栄養)がその場で行え、また食事摂取の仕方についても、利用者から悩んでいることを聞くことで助言が行える。その結果、利用者がバランスのよい食事を摂っていない事がわかる。自分の好きな食品を食べることにより、体重増加が起こり、腰や膝への負担、血糖値の上昇などが起こる。また反対に量や質の少なさにより低栄養状態となりやすく、認知症の加速へとつながることも考えられる。OTとしては、利用者が調理クラブへ参加する前に、動作方法や道具の操作能力、認知機能面の評価を行い、それらに問題がある方には、動作方法の指導や道具の選択により調理が可能となっている。
 今回、調理という活動を通して栄養士とOTが連携することの意義が明確となった。また利用者主体で行っている調理クラブは、各利用者の生活背景(栄養の偏り、調理動作)の把握もでき、生活習慣病の重要な要素である、「食事」についても予防の観点から具体的・個別的な取り組みが可能となった。
 今後の課題として、各利用者の身体的変化に伴い各々に適した調理道具の選択、環境調整、そしてクラブ内での利用者同士の相互関係も図っていきたい。
著者関連情報
© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top