九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 220
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手指基節骨骨折術後に対する早期運動療法
*武田 実一 道伸鈴木 康一
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抄録
【はじめに】
 近年、強固な内固定材料の開発により基節骨骨折例においても術後翌日からの早期運動療法が可能となった。今回、開放性骨幹部骨折例に対する早期運動療法を経験したので、若干の考察を加えて報告する。
【症例紹介】
 60歳代、男性、農業。ダンプの荷台のリアゲートを閉める際にはさまれ受傷。当院受診し左環指基節骨骨幹部開放骨折の診断を受け、手術目的で入院。プロファイルコンボのM/L のT型6穴プレート(背側より伸筋腱を縦切し設置)にて骨接合術施行。
【術後セラピィ】
 術後翌日より単関節毎の軽度他動関節可動域訓練、MP関節屈曲・伸展位でのIP関節屈伸を自・他動運動10回、MP、PIP関節blocking を午前・午後各1回。術後1週より日中アルフェンスシーネ除去となる。除々にPIP関節屈曲拘縮が増悪してきた為、術後4週よりPIP関節伸展用動的スプリント装着30分を1日6回実施。
【結果】
 術後翌日の環指の可動域はMP・PIP・DIP関節の自動屈曲/伸展は80/15・80/-24・54/-5、PIP他動伸展は-10度であった。術後6週ではMP・PIP・DIP関節の自動屈曲/伸展は80/15・100/-32・60/-5、PIP他動伸展は-10度であった。受傷前より環指PIP関節-10度位の屈曲拘縮が若干存在していた。退院後は仕事復帰されている。
【考察】
 基節骨骨折は、掌側凸変形を起こし易く、PIP、DIP関節の可動域制限が生じ易い。本症例においては、強固な内固定術が施行されたため、可能な限り再転位が予防でき、愛護的な早期運動によって可動域制限の発生を予防できたと考えている。しかし、可動域は十分ではなく、特にPIP関節においては自動伸展不足が残存した。そのため仕事復帰はされているが、仕事および日常生活上の手の使い難さは残ったと思われる。基節骨骨折例におけるPIP、DIP関節の可動域制限の原因は各関節を構成する軟部組織による拘縮と基節骨周囲に存在する屈筋腱、伸筋腱(指背腱膜)の骨折部での癒着による拘縮がほとんどである。その中でPIP関節の自動伸展不足は伸筋腱の癒着が原因であり、今回のような運動方法では基節骨に広く膜状に接する指背腱膜の癒着は予防し難いと考えられた。今後は解剖学的特徴、手術襲侵部での癒着を加味して、伸展スプリントの早期導入、伸展運動の割合の増加などを検討し、実践していきたい。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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