九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 221
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Zone1,2 屈筋腱修復術後の早期自動運動療法における再断裂例と成績不良例の検討
*田崎 和幸野中 信宏山田 玄太坂本 竜弥油井 栄樹貝田 英二宮崎 洋一
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抄録
【はじめに】
 強固な腱縫合法の開発により屈筋腱断裂例に対して術後早期から自動屈曲を行う早期自動運動療法が始められ,諸家の報告の如くその治療成績は向上した.しかし,術後早期からそれまで禁忌とされていた自動運動を行うことは,再断裂などの危険因子はより多くなるとともに発生する可能性が高くなったことも事実である.今回,当院の症例にて再断裂例と成績不良例について検討したので報告する.
【対象】
 屈筋腱断裂後に強固な吉津法にて縫合され,早期自動運動療法を行ったZone1,2損傷の19例20指を調査した.再断裂した2例2指とStricklandの評価基準で優でなかった3例3指のうち,受傷前から陳旧性mallet fingerによるswan neck変形を呈していた1例1指を除外した4例4指を症例の同意のもと対象とした.全例損傷部位がZone2の男性で,年齢は46~61歳(平均52.2歳)あった.
【経過】
<症例1>ノミにて右小指受傷.術後2.5週の休日に禁忌事項として指導していた他動伸展運動を行い再断裂した.断裂腱を再縫合して早期自動運動療法を行ったが,術後6週のStricklandの評価では不可で,その後来院しなかった.
<症例2>包丁にて右示指受傷.術後9.5週の休日に禁忌事項として指導していた草むしりを行い再断裂した.断裂腱再縫合後3週間固定法にて運動を行った.Stricklandの評価では再断裂前・後ともに優であった.
<症例3>ナイフにて左示指受傷.早期自動運動療法は順調であったが,術後10日目にinfectionにてOT中止し,病巣廓清術が施行された.術後4週でOT再開したが,術後7週のStricklandの評価では不可で,その後来院しなかった.
<症例4>電動鋸にて左示指受傷.経験の浅いセラピストが担当したためか,獲得可動域が不十分で腱剥離術を施行した.Stricklandの評価では腱剥離術前・後ともに可であった.
【考察】
 現在,早期自動運動療法は修復した腱に必発する癒着を最小限に予防する最も効果的な方法と言える.しかし,冒頭でも述べたように術後早期からの運動は多くの危険因子を含んでいる.今回少ない対象であるため多くは提言できないが,今後の課題として休日中の管理,infection,知識・技術の習得が挙げられた.まず,再断裂においては休日前に徹底した禁忌事項,患手管理の再指導を行う必要があると考えられた.infectionに関しては原因を特定できないが,早期運動中は創が離開し易いため密に縫合してもらう.また,創傷が治癒するまで期間は担当医との連絡を密にして創部の清潔を保つことが大切であろう.最後に知識・技術の習得であるが,養成校にて腱損傷の早期自動運動療法に対する詳細な教育が行われていない現在,卒後に腱損傷における基礎・応用知識および早期自動運動療法に関する技術を習得することが重要と考えられた.
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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