九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 231
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手浴の温熱効果を向上させる方法について
*大重 匡高森 明久西 宏晃田中 信行
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キーワード: 入浴剤, 自動運動, 深部体温
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抄録

【目的】
 手浴による部分浴の温熱効果を促進するための方法として、昨年は市販の炭酸入浴剤の使用が、単純泉より有意に深部体温を上昇させることが認められた。今回は、市販の炭酸入浴剤に手指の屈伸を加えてみることで、さらなる温熱効果が得られるかについて検討した。
【対象】
 対象は、健常若年男性12名(平均年齢22.8±2.9歳)である。
【方法】
 手浴は、室温を19℃に設定した部屋にて、充分な安静座位後に41℃の右手浴を20分間施行し、その後30分間の保温状態を観察した。手浴の方法は3種類とした。1つは単純泉浴、2つ目は市販の炭酸泉入浴剤を使用した炭酸泉浴、3つ目は炭酸泉浴中に手指の自動屈伸(60回/分)させた屈伸炭酸泉浴である。なお、3種の手浴はランダムに日を変えて施行した。また、コントロール群として手浴なしの手指屈伸も行わせた。
 測定項目は、脈拍数、血圧、右上腕の皮膚血流量、舌下温(深部温)、表在温(額、頚部、左上腕、腹部、左大腿、左足背、左足趾)、Borgの主観的作業強度を温感に改変して測定した。測定は手浴前と手浴20経過時、手浴後30min経過時に行った。
 統計処理は、一元配置分散分析を行い、有意差を認めた場合に多重比較を行った。
 本研究は、本学の倫理審査の承認を得て行った。
【結果】
 深部温は、一元配置分散分析で有意差(P<0.05)を認め、多重比較で屈伸炭酸泉浴が0.52℃上昇し、次いで炭酸泉浴が0.4℃、単純泉浴が0.27℃、手指屈伸は0.16℃となり、手浴における多重比較では炭酸泉浴と単純泉浴に有意差(P<0.05)を認めた。皮膚血流量でも一元配置分散分析で有意差(P<0.05)を認め、屈伸炭酸泉浴と手指屈伸が炭酸泉浴と単純泉浴より有意に増加した(P<0.05)。また脈拍数でも一元配置分散分析で有意差(P<0.05)を認め、最も増加した屈伸炭酸泉浴と最も変化が少なかった手指屈伸の比較で有意差を認めた(P<0.05)。
【考察】
 深部温で最も変化が大きかったのは、屈伸炭酸泉浴であった。この結果は前回の第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会で報告した炭酸浴の効果より大きい結果となった。上腕部の皮膚血流量では手指屈伸のみが炭酸泉浴と単純泉浴より有意に増加した。以上により、加温効果のある炭酸泉による手浴で温められた表在血が手指屈伸運動で、全身に多く循環された結果、屈伸炭酸泉浴の深部温変化が大きくなったと考える。さらに、心拍数の変化では手指屈伸が最も少なかったことから、手指屈伸の運動負荷強度は非常に小さいと推測される。このことから手軽におこなう手指屈伸であっても温浴効果には大きな役割を持つことが期待できる。
【まとめ】
 健常若年男性に対する手浴で、単純泉浴と炭酸泉浴と手指屈伸を伴う炭酸泉浴を行った。結果、手指屈伸を伴う炭酸泉浴が最も深部温を上昇させた。

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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