九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
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術式の違いにおける大腿骨近位部骨折患者の術後1週での荷重時痛について
*村上  雅哉福田 文雄
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抄録

【はじめに】
 大腿骨近位部骨折患者において術後早期荷重が指示される場合が多い.しかし、荷重を行うにあたって一番の阻害因子として疼痛が挙げられる.特にγ‐nail術後は早期荷重開始後、疼痛の訴えが強く術後1週経過しても訴えが持続する場合が多い.本研究の目的は、大腿骨近位部骨折でγ‐nailと人工骨頭置換術を実施した患者の術後1週の荷重時痛について違いがあるか否かを明らかにすることである.
【対象・方法】
 2007.8.1~2009.1.31までに当院入院し、明らかな認知症を有する患者を除外し、今回の研究の同意が得られた患者22名(γ‐nail 9名、人工骨頭置換術13名)とした.平均年齢76.8±9.1歳、疼痛評価は、簡易的なNumerical Rating Scale(以下NRS)を用いた.NRSとは患者に口頭にて聴取し、その場にスケールがなくても簡易的に評価できる評価法である.術後1週での値を聴取し、Wilcoxonの検定により比較し有意水準は5%未満とした.
【結果】
 γ‐nail群の術後1週のNRSは5.7±1.4、これに対し人工骨頭置換術群の術後1週のNRSは2.0±1.4であった.これら2つの関係において有意な相関関係(P<0.05)が認められた.
【考察】
 高齢者の大腿骨近位部骨折後の理学療法は、術後せん妄・認知症・排尿障害などの二次的合併症を予防するため、早期離床・荷重が推奨さる.γ‐nail術後も例外でなく、ガイドラインによると「固定性良好であれば早期荷重訓練を推奨する」がエビデンスではGrade1となっている.当院において、大腿骨近位部骨折の症例は可及的早期に離床・荷重・歩行を行っている.しかし、今回の調査からγ‐nail術を行った場合は、人工骨頭置換術を施行した患者に比べ有意に疼痛の訴えが強いことが示唆された.骨折部の痛みの原因として、手術創部痛の他に、骨折部の安定性が考えられる.人工骨頭の場合、骨折部は切除されその代わりに大腿骨髄内にインプラントが挿入されるため骨折部の痛みはなく、主に手術による創部痛がメインと考えられる.一方γ‐nailの場合、骨折片を骨接合しているとはいえ、骨片間は不安定な場合があり、特に不安定型骨折の場合などテレスコーピングし骨折部が安定化するまで骨折部痛遅延が考えられる.早期荷重は術後成績がよいというエビデンスはないとされている.すなわち、二次的合併症を予防する早期離床・荷重・歩行を行う必要性はあるが、歩行能力の回復を目的とする無理な理学療法は痛みを助長させる可能性がある.したがって、早期荷重・歩行訓練を許可された場合であっても、二次的合併症の予防を目的とする理学療法を行うことが肝要である.
【まとめ】
 大腿骨近位部骨折における術後1週の荷重時痛は、γ‐nailの方が人工骨頭置換術に比べ疼痛が強かった.

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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