九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 023
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能動的下肢伸展挙上テストの動作解析
三次元CT画像を用いて
*荒木 秀明武田 雅史猪田 健太郎赤川 精彦太田 陽介廣瀬 泰之吉富 公昭三村 倫子末次 康平野中 宗宏山形 卓也姫野 信吉
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抄録

【目的】
 能動的下肢伸展挙上テスト(以下ASLR)は当初、産後女性における体幹と下肢間での効果的荷重伝達機能の検査として報告され、その後多くの追試が行われ、妥当性が報告されている。その理論的背景として、腰部-骨盤帯-股関節構成体が機能的に最適である場合、下肢をベッドから挙上する際なんら努力も要せず、また下肢や胸郭との相対的位置(屈曲、伸展、側屈、回旋)にも変化がないとされている。しかし、運動学的背景としての報告は三次元動作解析器を用いた骨盤と体幹、あるいは骨盤と下肢の関連性に関するものがほとんどであり、仙腸関節の機能に着目した寛骨と仙骨の相対的位置に言及し、画像から捉え検討した報告は未だない。今回、ASLRテストにおいて陽性と認められた症例に対して三次元CT画像を用いて、寛骨と仙骨と相対的位置関係を検討し、興味深い知見が得られたので報告する。
【対象および方法】
 罹病期間が3か月以上の慢性腰痛症で、ASLRテストにて片側性に陽性を呈する5例を対象とした。内訳は男性3例、女性2例、平均年齢が32.3歳であった。除外診断項目として、明らかな神経学的脱落所見を呈するもの、外科的治療施行後、著明な脊柱の変形を有する症例とした。方法はHITACHI社製Multi slice CT ECLOSを用いて撮影を行った。測定肢位は、1)背臥位、2)両側下肢伸展位から陰性側下肢を膝関節伸展位で踵をベッドから30cm持ち上げた肢位(以下、陰性下肢)、3) 両側下肢伸展位から陽性側下肢を膝関節伸展位で踵をベッドから30cm持ち上げた肢位(以下、陽性下肢)。撮影画像からの測定項目は寛骨と仙骨の相対的位置関係を確認できるように、矢状面画像で上前腸骨棘(以下ASIS)と上後腸骨棘(以下PSIS)を結んだ線と仙骨上面の接線のなす角度、水平面画像で正中矢状軸と寛骨のなす角度を測定した。なお、対象者には事前に十分な説明を行い、同意を得た。
【結果】
 全例とも性差に関係なく、同様に以下の傾向が認められた。1)矢状面画像では陰性下肢が開始肢位とほとんど変化がなかったものの、陽性下肢では寛骨の後方回旋と仙骨の前傾が有意(p<0.05)に生じていた。2)水平面画像でも陰性下肢は開始肢位とほとんど変化がなかった。陽性下肢は寛骨の正中矢状軸との開角には変化が認められなかったが、骨盤輪自体の挙上下肢側への回旋が認められた(有意差なし)。
【考察】
 本論文はASLRテストで片側性に陽性を呈する症例に対して、骨盤内の動きを画像的に検討した初めての報告である。ASLRテストで陽性を呈する症例では筋による固定が効果的に作用せず、そのため寛骨の後方回旋、仙骨の前傾(仙骨nutation)という仙腸関節のlocking機序を代用しているものと示唆された。

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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