九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 036
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脳性まひ児に対する足部手術後の理学療法評価の試み 第3報
HHDを実際に使用し足関節背屈他動運動抵抗を評価記録した1症例
*間普 千恵松本 力栗原 まり柴田 さやか重信 聖貴坂井 奈津子劉 斯允
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抄録
【はじめに】
 小児領域のリハビリテーションにおいて、尖足に対する整形外科的選択的痙性コントロール術(以下osscs)後の足関節背屈の可動域を評価することは重要なことである。しかし、実際の臨床場面では成長や筋の粘弾性の低下により足関節背屈時の抵抗感に違いを感じることがある。その抵抗感を客観的に評価する検査はまだ確立されておらず、症例やその家族に主観的なフィードバックしか行えていないのが現状である。そこで今回、足関節背屈時の他動運動抵抗をハンドヘルドダイナモメーター(以下HHD)で測定・評価できないかと考え取り組みを行った。
【対象】
 脳性まひをもつ(右足部尖足)11歳の男児。GMFCSレベル1。平成19年に右足部のosscsを実施。以後、週2回の理学療法と自宅にて立位台でのストレッチを行っている。尚、今回の目的を症例及びその家族に説明し、了承を得た上で実施した。
【方法】
 測定にはANIMA社製 等尺性筋力計μtas F-1を用いた。測定は背臥位で行い、理学療法前後に一定の抵抗を加えた場合と最大抵抗時の膝伸展時の足関節背屈角度(以下DKE)を測定した。抵抗は筋線維の伸張に最も影響を及ぼすといわれている100Nとした。HHDはセンサーパッドを第1および、第5中足骨頭を結ぶ線上に当て、測定はなるべく遅い速度で行い、症例には協力も抵抗もしないように伝えた。なお自宅での訓練はチェック表を作成し、症例自ら記入してもらった。測定結果の統計処理には対応のあるt検定を用い、危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
 100N時の平均角度は理学療法前12.4±3.08°、後16.7±3.30°となった。最大抵抗時は、理学療法前26.4±3.26°、後31.4±2.43°であった。ともに理学療法前後において有意な差がみられた。(p<0.05)
【考察】
 今回の結果より理学療法前後で100Nという同じ抵抗を加えた時の角度を記録することで、抵抗感の増減を客観的に表現することができたのではないかと考える。また、自宅での訓練が実施出来ているときは、特に理学療法前100N時のDKE値の増加がみられたことを症例やその家族に客観的なデータとして繰り返しフィードバックしたことで、本症例自身が自主訓練の必要性を認識することができた。これは単に術後評価だけでなく自己管理を意識付けすることにも有用な方法であることが示唆された。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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