九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 037
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整形外科疾患患者へのCOPMの試み
*下尾 隆成生駒 成亨森田 容子
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キーワード: 整形外科疾患, COPM, ニーズ
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抄録
【はじめに】
 クライアント中心の作業療法を実践するためのツールとしてカナダ作業遂行測定(以下COPM)は用いられるが整形外科疾患の患者に対してCOPMを用いた報告は少ない.そこで今回右変形性股関節症を呈し人工股関節全置換術(以下THA)を施行され,自宅復帰をされる患者に対して日常生活を主体的に考える機会の提供と退院前の不安軽減を目的にCOPMを実施し,患者のニーズに沿ったリハビリテーション(以下リハビリ)を行い変化が得られたので報告する.
【症例紹介】
 70歳代前半の女性.平成20年9月に左THAを施行し,自宅退院後に徐々に右股関節痛増強し,右変形性股関節症の診断にて平成21年3月に右THAを施行.手術後は当院THA術後パスに沿ってリハビリを実施し,バリアンスなく経過.術後14日目の時点で著明な関節可動域制限なし,右股関節周囲筋群の筋力はGレベル.歩行は一本杖にて院外歩行可能であるが連続歩行は約500m程度である.Barthel indexは入浴,更衣が減点で90点であった.
【方法】
 術後14日目にCOPMを用いてクライアントが問題としている作業を上げてもらい,その結果を基にクライアントと優先項目を決定した.この項目について集中的にリハビリを実施し,術後21日目に再評価を行い,その傾向を分析した.
 なお今回の発表に際し,クライアントへ説明し承諾を得た.
【結果】
 術後14日目の評価で問題があるとした9項目の作業の中から優先項目をつけたのは「床のものを拾う」重要度;10点,遂行度;7点,満足度;5点,「畳の上を安定して歩けるようになる」重要度;9点,遂行度;2点,満足度;2点,「ズボンや靴下を履けるようになる」重要度;10点,遂行度;2点,満足度;3点であった.
 術後21日目の評価の結果, 「床のものを拾う」は遂行度;8点,満足度;8点,「畳の上を安定して歩けるようになる」は遂行度;5点,満足度;7点,「ズボンや靴下を履けるようになる」は遂行度;9点,満足度;8点となった.
【考察】
 整形外科急性期,特に術後患者では機能回復と自宅指導が中心であるが,臨床において退院に不安を抱える患者を多く経験する.そこで今回,THA術後患者にCOPMを用いたアプローチを試みた.
クライアントは病棟内ADLがほぼ自立されながら,在宅復帰に不安を抱えていたため,問題となる作業を考える機会を提供し,より主体的にリハビリを行うことが重要だと考え,アプローチを試みた結果,遂行度,満足度ともに良好な結果を得られた.
 今回のことから,機能回復を図るとともにクライアントにとって意味のある作業について共に取り組むことで退院時の不安軽減に繋がるのではないかと考える.また回復期や外来時でも継続し再評価を繰り返し行うことで,その時々の状態,ニーズに沿った作業療法を提供することができるのではないかと考える.
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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