九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 039
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当院回復期リハビリテーション病棟における転帰の影響
重症度別での分類に関連して
*田久保 早紀田中 正昭光武 翼西村 香織真島 東一郎
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抄録

【はじめに】
 H20.4月の診療報酬改定に伴い、退院患者の60%が自宅復帰、日常生活機能評価(以下、看護必要度)を用いた改善度と、この必要度を用いた新規入院患者の重症率が15%以上の項目が導入された。我々は、Barthel index(以下、BI)と看護必要度の関連について検討し、関連性が強いことがみられた。そこで今回、当院回復期リハビリテーション病棟(以下、リハ病棟)の脳疾患患者を対象に、看護必要度を用いて重症度別での転帰の影響について検討した。
【対象】
 H20.4月~H21.3月の間に、当院リハ病棟を入・退院した78例(男性40例、女性38例)のうち、転帰が死亡退院または再発等による急性期病棟への転棟、転院例を除く62例(疾患内訳 脳梗塞42例、脳出血12例、くも膜下出血4例、その他6例)を対象とし、平均年齢は74.1±14.1歳であった。対象者を入棟時看護必要度の点数が10点以上の症例を重症群、10点未満を軽症群に分類した。
【方法】
 以下の項目に対し、診療録にて後方視的に調査をした。調査項目は、年齢、発症から入棟までの日数、入棟・退院時BI、入棟・退院時Ns必要度とした。これらの項目に対し、転帰で自宅群・自宅外群(療養病床、施設等)に分類し、比較・検討をした。尚、統計方法は、対応のないt検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】
 今回、リハ病棟を退院した62例の重症度別での自宅復帰率は、重症者11例(39%)、軽症者31例(91%)であった。重症度別での年齢・発症から入棟までの日数では、年齢は重症群(自宅群78.0±8.8、自宅外群80.8±9.1)、軽症群自宅群(68.8±16.7、自宅外群77.3±4.9)、発症から入棟までの日数は、重症群(自宅群28.0±15.9、自宅外群42.6±28.4)、軽症群(自宅群23.5±11.4、自宅外群29.5±24.5)であり、有意差を認めなかった。入棟・退院時BI(入棟時/退院時)では、重症群(自宅群20.4±17.3/53.1±29.6、自宅外群13.8±17.4/28.8±32.3)、軽症群(自宅群77.2±18.4/96.9±7.2、自宅外群31.6±23.6/58.3±2.8)であり、軽症群は入棟・退院時ともに有意差を認めた(p<0.001)。入棟・退院時看護必要度(入棟時/退院時)では、重症群(自宅群11.5±2.2/7.1±4.5、自宅外群12.7±5.4/9.8±4.2)、軽症群(自宅群3.0±2.3/0.3±0.9、自宅外群7.6±1.5/6.3±1.5)であり、軽症群は入棟時(p<0.01)退院時(p<0.001)ともに有意差を認めた。
【考察】
 当院のリハ病棟は、看護必要度が入棟時10点以上では、自宅に帰りにくい傾向にあった。重症度別での転帰に影響する要因として、軽症群では、ADL能力が転帰への影響に強いことがわかった。一方、重症群では、ADL能力には差が見られていないことから、家族支援の配慮が必要であることが言える。そのため、退院後のサービス利用の準備に加え、家族への介助方法等の動作指導を早期から積極的に取り組んでいくことが自宅復帰するためには重要であると考えられる。これより、転帰には入棟時点での重症度において、早期からの援助体制を整える一つの指標になると考えられる。

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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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