九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 091
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脳卒中片麻痺患者において短下肢装具装着が麻痺側下肢荷重に与える影響
~トイレ動作を想定した下衣の上げ下げ動作での検討~
*古賀 大介南正覚 肇小川 洋平池田 悠一朗木村 潤一
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抄録
【はじめに】
 短下肢装具(以下AFO)は一般的に歩行能力の向上を目的として作成され、歩行速度の向上や歩容の改善といった歩行時の効果検証を床反力計や筋電計を用いて行なった報告が散見される。しかしAFO装着立位での日常生活活動(以下ADL)動作に関しての研究は少ない。そこで今回トイレ動作を想定したAFO装着下での下衣の上げ下げ立位動作について着目し、麻痺側下肢荷重に関する影響を調査し、若干の知見を得たのでここに報告する。尚、症例には本件に関し十分説明し同意を得た。
【対象者】
 指示動作が理解・遂行でき、裸足立位で膝部までの下衣の上げ下げが監視レベル以上で可能であり、かつAFOを自己所有する脳卒中片麻痺の患者15例。平均年齢66.8±11.2歳、男性9名、女性6名、右片麻痺6名、左片麻痺9名。
【方法】
 対象者は、検者が用意した下衣を自己の下衣に重ねて履き、両踵部を20cm離して静的立位をとり、そこから下衣を両側大腿1/2以下まで下げ一旦立位に戻った後、再び両側大転子部が十分に覆われるまで戻す上げ下げ動作を行った。この動作を裸足時とAFO装着時で行い、60秒間の総軌跡長と外周面積、麻痺側荷重量の変化および動作時間を重心動揺・下肢荷重検査計(Medicapteurs社製 win-pod)を用いて記録した。測定結果はt検定を用いて統計処理を行い、危険率5%以下(p<0.05)を有意差とした。
【結果】
(1)下衣の上げ下げ動作において、AFO装着下では裸足と比較し麻痺側下肢への荷重量が有意に増加した。総軌跡長・外周面積・動作時間に有意差はなかった。
(2)AFOの種類、Br.stage別、感覚鈍麻の程度ごとのt検定でも金属支柱付AFO・stageIII・軽度感覚鈍麻で麻痺側下肢荷重量が有意に増加した。
【考察】
 麻痺側下肢の荷重量増加について大峰らは装具装着により足部が安定し下肢の支持性が増すことを報告している。また、川手らもAFO装着によって足部の前後方向のみならず特に左右方向の動揺を抑制する働きが大きく、麻痺側足関節を固定することで両下肢支持が可能になることを報告している。
 計測中も裸足では踵部が浮いていた者がAFO装着により足底全面接地が可能となり、麻痺側の荷重量増加が感じられた。Br.stageIIIの有意差は、随意性が低く足部が不安定な場合に装具の効果が高く、金属支柱付AFOでの有意差はAFOの中でも足関節の固定が強固な場合により効果が高い可能性が示唆された。また感覚軽度鈍麻でも有意差が認められたが、これは重度鈍麻よりも足部の固定性向上を感覚的にフィードバックして荷重量増大に繋げられることも考えられた。
 以上のことから、AFOの装着によって歩行だけでなく立位でのADL動作でも安定性が向上する可能性が示唆された。
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© 2009 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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