2001 年 16 巻 3 号 p. 139-143
歩行開始の運動制御を理解することは、定常歩行と同様に重要である。健常者の歩行開始は、下腿三頭筋の活動低下およびこれに続く前脛骨筋の活動により開始される。これらの筋群の作用による足圧中心の後方移動が起こって、身体が重力に引かれて前方に回転することにより、前方への重心移動が開始される。この基本パターンは年齢に関係なく一定であるが、足圧中心の後方移動は子供や高齢者では小さくなる。また、大人でも子供でも、最初の一歩の終了までに必要な時間は歩行速度には依存せず、生体力学的条件により決定される。パーキンソン病の歩行開始は、振り出し開始までの時間が延長することが特徴的である。