抄録
世界で最初のオプション価格決定モデルであるBachelier (1900) の貢献と問題点ついて展望をおこない、その拡張を行った。Bachelier (1900) モデルは、原資産価格が正規分布することを仮定しているために、資産価格が負になる。従って、無裁定条件をみたさないことが、Samuelson (1965)やSmith (1976)によって指摘されている。後年 Later, Liu (2007) や Kolman (2013)は、資産価格が算術平均過程に従う場合における、Black and Scholes(1973) の無リスクヘッジポートフォリオ構築、あるいはリスク中立評価方法にもとづくオプション価格決定モデルを導いたが、依然として導かれたオプション価格が裁定条件を満たさないことを指摘した。
この論文では、原資産価格が算術ブラウン運動に従い、代表的な投資家の消費が幾何ブラウン運動に従うと仮定して、投資家の期待効用を最大にするような資産価格を導いた。すなわち、Bachelier (1900) の整合性を一般均衡モデルの枠組みで再構築をした。またそうして得られた価格モデルを用いて様々なリアルオプション問題や企業財務に関する問題を解くことができることをしめした。