九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 64
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免荷は足運動イメージに影響を及ぼすか
*野崎 壮
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抄録
【はじめに】免荷を呈した患者が荷重訓練を開始する際、足部のぎこちなさなどの違和感を訴えることを経験する。その原因の一つに、下肢の運動イメージ低下の影響があると推察する。全ての行為には運動イメージが先行しており、運動機能回復を促進するためには運動イメージを想起させる必要があるとされる。運動イメージの簡便な測定方法として手足の回転図形を用い、左右どちらかを回答するMental Rotation(以下、MR)がある。その反応時間は運動イメージ想起能力を反映すると考えられている。今回の目的は、免荷が足運動イメージに影響を及ぼすかを足部MRを用いて検討することである。
【対象】下肢に既往の無い健常群14名(男性8名、女性6名、平均30.5±6.2歳)と下肢疾患により免荷を要した中で足関節可動域制限の無い患者群17名(男性8名、女性9名、平均42.7±15.1歳、免荷7~10日)。全ての対象者に本発表の趣旨を説明し同意を得た。
【方法】足運動イメージの評価として足部MRを用い、反応時間について検討をした。1)健常群と患者群、2)患者群の健側と患側(免荷期)、3)健常群と患者群の患側(免荷期)、4)健常群と患者群の健側および、患者群のうち経過を追えた7名(全荷重開始7~10日)の5)健側での免荷期と全荷重期、6)患側での免荷期と全荷重期、の6項目とした。統計処理は1)2)3)4)はMann-Whitney U検定、5)6)はWilcoxon検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】1)健常群と患者群の比較では、健常群1.20±0.26、患者群1.87±0.70で有意差を認めた。2)患者群(免荷期)の健側と患側の比較では、健側1.84±0.76、患側1.91±0.68で有意差を認めなかった。3)健常群と患側(免荷期)の比較では、健常群1.20±0.26、患側(免荷期)1.91±0.68で有意差を認めた。4)健常群と健側の比較でも、健常群1.20±0.26、健側1.84±0.76で有意差を認めた。免荷期と全荷重期の比較では、5)健側は、免荷期1.77±0.53、全荷重期1.61±0.39で有意差を認めなかった。6)患側でも、免荷期1.90±0.48、全荷重期1.63±0.41で有意差を認めなかった。
【考察】荷重時の足部は様々な情報が入力される部位である。免荷によりその入力が減少し、運動イメージが低下することで、ぎこちなさなどの違和感を生じると仮説を立て検討した。2)3)4)の結果より、免荷によって、患側だけではなく健側においても足運動イメージが低下し、また、5)6)より、全荷重開始後、1週間以上経過しても反応時間が改善しないという結果が得られた。先行研究では、何らかの疾患を有する場合、罹患側の反応時間が延長するとの報告があるが、今回の結果からは患側と健側ともに反応時間が延長していた。また、免荷から全荷重の過程では足運動イメージ想起能力が改善されていないことからも、免荷側だけではなく健側への指導及び荷重、歩行訓練に先立ち、運動イメージを賦活できるアプローチの必要性を感じる。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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