九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 65
会議情報

前方体重移動時の下腿筋活動と足趾接地状態の関連性
*千原 麻衣子豊田 彩三好 ゆか林 奈津美廣田 明大古田 幸一
著者情報
キーワード: 浮き趾, FRT, 姿勢制御
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
立位時の足趾が、床面への接地不良状態を浮き趾といい、近年外反母趾を伴って中高年で80%にみられ、前方体重移動能力の低下、二次的障害を引き起こす報告がなされている。しかし、浮き趾と下腿筋活動との関連の報告例は少なく、下腿筋活動に特異的なものはあるのかという疑問を生じた。姿勢制御のために感覚受容器が多く存在する足趾底面が床面に接地していないことで、足関節制御機能の破綻が生じ、前脛骨筋の過剰収縮、腓腹筋の筋出力低下が生じているのではないかという仮説のもと、関連性を見出すためにFunctional Reach Test(以下FRT)を用いて検討した。
【方法】
対象は研究の目的、趣旨を説明し、同意を得られた健常人42名(男性17人、女性25人、平均年齢27±5.6)。静止立位時の足底圧画像をピドスコープ(先行研究を基に作成)にて測定後、画像をデジタルカメラにて撮影、足趾接地状態の評価を恒屋の方法に従い、全趾がグレードG該当者を非浮き趾例、グレードPとFの該当者を浮き趾例とした。FRTは東京都老人総合研究所の方法に準じ、裸足にて左右1回実施、最高到達時5秒間静止した際の両下腿筋出力を測定した。表面筋電図(酒井医療株式会社・マイオリサーチXP)は前脛骨筋、腓骨筋、腓腹筋内・外側頭に電極(日本光電・ディスポ電極Lビドロード)を貼付し、計測モードをスタンダード、サンプリング周波数1000Hzで実施。得られた波形は、デジタル処理(整流化、RMS法でスムージング、100m秒にて算出)されたものである。電極貼付、FRT検査及び浮き趾判定は各々同一人物にて実施。統計処理は2SDにて1回切断で極端値を除外処理し、Mann-Whitney検定にて有意水準5%未満とした。
【結果】
筋電図数値と浮き趾例で左FRTでの左腓腹筋内側頭で有意差が認められた。(P=0.028)その他、有意差は認められなかった。リーチ距離(単位:cm)は、浮き趾例が非浮き趾例よりも平均値は低かった。(右FRT28.2、非浮き趾30.7、浮き趾27.8、左FRT28.2、非浮き趾31.1、浮き趾27.8)
【考察】
浮き趾例では、FRT時に足趾の床面を捉える機能が不十分となることで足圧中心軌跡が足趾部まで到達せず、足関節での姿勢制御よりも股関節機能にて多く代償されることから、下腿筋出力との関連性が認められなかったと推察する。左FRT時の浮き趾例では腓腹筋内側頭が低値であった。先行研究より左側は軸足と報告され、より足趾での床反力を受ける必要がある。FRT距離の減少からも、遠心性収縮での筋出力を多く必要とせず、内側頭のみみられたのは、感覚受容器が多く存在する第1趾への体重移動が不十分であったことが考えられる。浮き趾例では前方体重移動能力は低下傾向であることがいえるが、その際股関節制御機能を多く働かせ、姿勢制御を行っており、腰痛などの二次的障害にも繋がりやすいことが考えられる。また、左右での下腿筋活動の違いも示唆されたが、軸足との関係や接地状態の詳細な判定など因果関係の検討が今後必要となってくる。

著者関連情報
© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top