九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 133
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上肢帯複合骨折を呈した症例
~腱板機能の重要性~
*藤村 裕一
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抄録
【はじめに】
 肩関節の可動は筋や関節が複合的に作用する.動作を行う上で安定性は不可欠であり,肩関節においてはinner muscleが重要な役割を占めている.今回,交通事故により上肢帯の複合骨折を呈した症例を術後より担当した.症例の希望として復職があり,達成には上肢の挙上保持が必須であった.上肢機能ではADL面においてOpen Kinetic Chain(以下OKC)での動作が基本となるが,今回はOKCに加えClosed Kinetic Chain(以下CKC)での運動を導入した.長期化したが改善がみられたので理学療法経過と運動方法,考察を以下に報告する.
【症例】
 A氏,50歳代男性,2010年9月初旬交通事故にて右鎖骨・肩峰・肩甲骨粉砕骨折受傷.当院搬入後,鎖骨プレート固定手術,肩甲骨・肩峰は保存療法選択.術後28病日までバストバンド,三角巾固定(肩関節軽度屈曲・内転,肘関節屈曲90°位)29病日より振り子運動・関節可動域訓練開始(肩関節外転90°制限有り),2010年11月初旬退院後,外来リハビリにてフォロー.
【理学療法経過】
 7病日より理学療法開始.肩甲帯を中心にリラクゼーション,廃用予防訓練実施.29病日から他動による振り子運動,関節可動域訓練,OKCでの自動介助によるcuff-exを開始.初期評価時肩関節屈曲85°,外転80°(他動),上肢MMT2レベル,上肢動作全般において代償動作,疼痛が著明に出現.45病日よりOKCに加えCKCでの運動を導入.最終評価時肩関節屈曲120°(自動)130°(他動)外転100°(自動)110°(他動),上肢MMT3~3+レベル,代償動作,疼痛は軽減傾向.
【考察】
 介入時は疼痛及び代償動作が著明であり,自動運動の実施が困難であったので,動作に介助を要する時期からADL動作に近い運動を導入する必要があると考えプログラムの立案を行った.CKCでは遠位部固定により近位部をより強化することが可能である.筋肉や腱,関節包には固有感覚受容器があり関節の位置を感知する機能を持っており,手掌を介して刺激導入が可能となる.また関節が正確な位置を認知できるという点からも重要な運動方法である.一般的には,動作練習と外的負荷による運動を組み合わせた方法が筋力増加と協調性の点で効率が良いという報告が多い.ADL面において上肢動作とは相反するCKCを今回は多関節を要する肩関節動作の連鎖的な協調運動改善を目的とし実施した.上肢運動に介助を要する時期から導入したことでCKCの状態が介助の役目を果たし関節の位置学習,筋の協調的活動を促せたと考える.しかし術後の安静による廃用状態が著明にみられ,治療効果が出るまでに時間を要した.しかし症状固定される6カ月頃で改善がみられたことは今後の治療目安の再検討につながるのではないかと考える.
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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