抄録
【はじめに】
当院外来通院されている10代の症例への支援に関わる中で、多職種との連携や家族支援を経験させて頂いた。多職種連携と家族支援の経過をまとめたので報告する。なお、本報告においては両親と当院倫理委員会の承認を得た。
【症例紹介及び経過】
10代、男性、診断名は脳内出血。平成21年12月、緊急開頭血腫除去術施行。障害名は右片麻痺、失語症。発症から約1ヶ月後に回復期病棟へ転院、6ヶ月後に自宅退院。退院数日後から当院外来リハビリ週2回の頻度で開始、発症から約10カ月後に復学(在籍は普通学級)。その他、小児施設では月1回のリハビリ通院、他病院で定期的なカウンセリングを実施。
簡単な日常会話は可能。表出は短文レベル、理解は単語~短文レベル。右同名半盲、注意機能低下により危険回避能力は低い。上肢・手指・下肢機能はBRSでIVレベル。表在・深部感覚は中等度鈍麻。歩行は短下肢装具使用し屋内自立、屋外見守り。ADLはFIMにて113点/126点。通学は両親が送迎、当院通院はガイドヘルパーサービス利用。趣味はテレビ鑑賞、野球。身障者手帳は肢体不自由2級、療育手帳はB1。
【多職種合同カンファレンスまでの経緯と目的】
参加者は両親、教育・医療関係者、市委託相談員。多職種合同カンファレンスに至った経緯として、(1)10代で脳出血を発症した稀なケースであったこと、(2)当院において学校生活への支援経験が乏しかったことが挙げられた。
目的は教育関係者へ高次脳機能障害や身体機能障害の特異性の周知を行い、学校生活の充実化と安全性の確保を主とした。主な内容は教育関係者と医療関係者(3施設)の情報共有と役割分担を確認した。当院では心身機能練習、小児施設で学業支援を担当。また、相談窓口は市委託相談員に統一、連絡ノートを作成し家族・各関係者間の連携を図ることを確認した。
【結果と課題】
他職種合同カンファレンスは障害に対する安全管理や学業支援を教育関係者側へ伝達したことで学校生活の充実化に繋がった。課題として、学校外の活動は安全面に配慮したことで移動が見守りとなり症例のストレスとなった。症例のストレスの矛先は母親へ集中し対応方法を含め両親のフラストレーションとなった。
【今後の対応策】
市委託相談員を含む院内報告会にて各機関と連携及び情報共有を円滑にするためにメーリングリストの運用を検討。また、通学外でのガイドヘルパーサービスの見直しを検討し、課外活動としてスイミングスクールを推奨していく方針。
今後は進学を含め、症例及び両親の精神的なサポート体制を図り、安心した医療・学校教育が受けられるように、より一層の連携強化を図っていくことが望まれる。