九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 228
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退院後の生活を見据えた多職種との連携
~自宅退院が可能となった神経難病の症例を経験して~
*中村 久美林 正昭益川 眞一河津 隆三
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抄録
【はじめに】
 神経難病は本人や介護者にとっても負担が大きく、進行するにつれて自宅での生活が困難となるケースが多い。今回、多発性硬化症でADLはほとんど全介助の症例を担当した。家族の介護負担を考えて施設入所も検討していたが、本人の強い希望により自宅退院に向けてリフトを導入、家族やサービス事業者と連携することで安全を考慮した自宅退院につなげることができたので、以下に報告する。なお、本症例報告において当院倫理委員会の承認を得ている。
【症例紹介】
 多発性硬化症の50歳代後半女性。両下肢・体幹の運動麻痺、感覚障害、視力障害、排尿障害があり、食事はセッティングにて可能であるがその他のADLは全介助。30歳代後半に発症し、ここ数年は下肢の骨折を繰り返している。
【経過】
 症例は近年、原因が不明確な下肢の骨折により入退院を繰り返していた。長期のステロイド服用によって骨が脆弱化している上に下肢の随意性はほとんど無く、BMI29.5という高度の肥満であるため、移乗介助時に無理な外力がかかることが要因の一つとして考えられた。そのため、息子の介護負担を考慮して施設入所も検討されていたが、年齢が若いこともあり本人が自宅への退院を強く希望、息子の受け入れも良好であったため、カンファレンスにて自宅でのベッドと車いす間の移乗用にリフトの導入を提案することとなった。
 まず症例の自宅に訪問し、福祉用具の業者にも同行を依頼して間取りを見ながらリフトの使用が可能なスペースがあることを確認した。また、使いやすさから考えて固定型のリフトを導入することとした。症例は息子と二人暮らしであったが、息子は夜間仕事に出て昼間は睡眠をとるという生活スタイルであったため、症例自身の食事や入浴などは訪問看護やホームヘルパー(以下、ヘルパー)など多く関わっていた。そのため移乗用にリフトを導入すると、息子及び介助を行うスタッフがその操作方法を習得する必要があった。退院直後からスムーズに在宅での生活に移行できるよう、退院3週間前に自宅で使用するリフトと同じものを当院のリハビリテーション室に搬入し、車いす・ベッド間の移乗訓練を開始した。実際に介助者として関わる訪問看護・訪問入浴スタッフ・ヘルパーや息子、福祉用具の業者にも来院していただき、何度も移乗の練習を繰り返しながらより安全な方法や注意点などを話し合った。結果、安全を考慮した上で自宅退院につなげることができた。
【まとめ】
 身体機能面の改善が望めなくても環境調整によって自宅退院が可能となったケースを担当した。入院中から退院後のことを見据え、具体的に進めていくことで本人や家族も前向きに取り組むことができた。これらのことから、退院後に実際に関わるスタッフを含めて多職種間で連携をとっていくことでより多くの情報を共有でき、在宅での生活につなげやすくなると考える。
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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