抄録
【目的】
一般的に慢性期脳卒中患者のADL改善は難しいとされている。今回、臥床状態でADL全介助の慢性期脳卒中患者において、特に食事動作に着目し、感覚統合的アプローチをしたところ、比較的良好な改善を得られたのでここに報告する。なお、今回の研究の主旨を説明し、書面にて本人および家族の同意は得られている。
【方法】
対象は70代後半男性、診断名は左橋出血、廃用症候群、主訴は右片麻痺。現病歴は平成20年に左橋出血を発症、以後誤嚥性肺炎を繰り返し、平成22年、当院へ転院となる。転院時、Brunnstrom stageは右側はII、左側はV、感覚障害は両側ともに軽~中等度鈍麻であった。臥床状態で基本動作およびADLは全介助レベルでBarthel Indexは0点。左側のSTEFは12点、HDS-Rは10点で、失行、失認は特に認めなかった。方法は、5日/週、1回につき40分の作業療法を施行した。易疲労で歩行、基本動作の向上は困難であった。しかし、ADLの中で食事に対するモチベーションが高かったので、非利き手である左手での食事動作の獲得を目標とした。内容は通常の脳卒中作業療法に加えて特に固有受容器などを意識した感覚統合的アプローチを施行した。当初の左上肢の状態はスプーンを把持するも、筋緊張高く、動きをコントロールできず、食物を上手くすくえなかった。さらに左肩の動きなく、食膳の遠位に手が届かず、食べこぼし多く全介助であった。
【結果】
5ヶ月間のアプローチでBarthel Indexは0点から15点へと改善(移乗動作が一部介助、食事動作が自立)し、STEFは12点から34点に改善した。食事動作に関しては左側上肢の筋緊張が軽減し、スプーンですくえるようになった。また、食膳の遠位の食物も食べられるようになり、誤嚥無く妥当な時間内で食べこぼしも少なくなり、食事動作はセッティングにて自立した。
【考察】
今回、ADL全介助の右片麻痺脳卒中患者に対し、食事動作の獲得を目的に作業療法を実施した。疲労を考慮し軽負荷高頻度の左上肢の感覚統合的アプローチを行ったところ、左上肢の機能改善や食事動作の改善を認めた。慢性期脳卒中患者でも、食事動作の獲得に目標をしぼり、食事が行い易いよう環境を整え、感覚統合的なアプローチをしたことが食事動作の改善につながったと思われる。