九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 090
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沖縄県における小学生のスポーツ外傷に関する報告
*安田 知子
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抄録
【はじめに】
 こどもの運動不足や能力低下が危惧される一方、早期から競技スポーツに携わるこどもたちも多い。今回、小学生を対象にスポーツ外傷に関するアンケート調査を行ったので若干の考察を加えて報告する。
【対象】
 某公立小学校生徒690名中、有効回答460名(男児214名、女児246名)をコントロール群とした。また、県内でスポーツ整形外科を専門としている医療機関9箇所を平成15年9月末から約1ヶ月間に受診し、調査協力可能であった117名中の有効回答97名(男児66名、女児31名)を受診群とした。
【調査内容】
 アンケートは、年齢、性別、身長、体重、現在行っているスポーツ、外傷の既往とし、受診群は診断名も調査した。尚、アンケートは、本調査の趣旨を説明し、同意を得られた無記名の回答を集計した。
【結果】
 コントロール群の平均年齢は8.9±1.9歳、身長132.5±12.2cm、体重29.7±8.4kg、受診群10.3±1.6歳、141.9±11.6cm、35.0±8.9kgであった。コントロール群の205名が競技を行っており、多いものから水泳77名、野球27名、サッカー19名、バスケット18名であった。受診群82名は、野球29名、バスケット25名、サッカー10名であった。
 次に、競技種目と外傷との関連性を検討した。コントロール群の水泳は、いわゆる筋肉痛などが3名であった。野球では、キャッチボール中の骨折1名、走行時の膝等の痛み3名であった。サッカーでは、足関節捻挫1名、競技後の痛みが7名で、バスケットは、7名が足関節捻挫で受診、いわゆるつき指の3名は受診していなかった。また、オスグッドを疑わせる膝痛が4名いた。受診群の野球は、足関節捻挫や打撲などが5名、野球肘が12名であった。サッカーは、足部骨端線障害5名、膝蓋靭帯周囲痛も2名いた。バスケットは、足関節捻挫が4名、打撲5名、突き指が3名、有痛性外脛骨など足部痛は2名、膝蓋靭帯炎も2名であった。
【考察】
 コントロール群と受診群では年齢、身長、体重には有意水準1%で有意差を認め、一定の年齢に達して以降に外傷が多発していることを示していると考えられた。競技種目と外傷の関連では、水泳はコントロール群で最も多く行われていたが、受診群では少なく、起因する外傷もなかった。水泳は、全身運動として幼少期から親しませる種目として推奨されており、かつ安全に楽しむことができると考えられた。野球は、受診群に野球肘が多く、コントロール群にはいなかった。これは体幹を含めた正しい投動作習得の難しさと、肘関節が成長期では未成熟な関節であることに加え、練習量の過多等の問題にも注意が必要であることを示唆すると考えられた。球技系では、急性外傷の足関節捻挫が多く、避けがたい問題であり、適切な予防策が必要であると考えられる。受診群の成長期に特有な骨端線障害は、コントロール群も同様な問題が疑われ、的確な診断と治療が必要ではないかと考えられた。
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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