九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
会議情報
足趾運動による即時的な足部内側縦アーチの変化について
~タオルギャザーの実施肢位の違いによる比較~
*橋本 裕司*羽田 清貴*奥村 晃司*井原 拓哉*杉木 知武*川嶌 眞人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 10

詳細
抄録

【目的】

スポーツ動作時のマルアライメントに関して、回内足や足部内側縦アーチ(以下、MLA)の低下による、上行性の運動連鎖の破綻がACL損傷やシンスプリントの危険因子であるとの報告が散見される。また、MLAの形成は、足部内・外在筋が重要で、特に足部内在筋の筋力低下や萎縮がMLAの低下に関与するとした報告がある。

臨床で頻繁に行われるタオルギャザーエクササイズ(以下、TGE)は、一般的に股・膝関節90°屈曲位、足関節底背屈中間位で実施されるが、MLA形成への影響は一定の見解がない。この肢位は、MLA形成に重要な足部内在筋が使用しにくい肢位と考えられる。

本研究は、TGE実施肢位の違いが即時的にMLAに対して影響を及ぼすか検証することを目的とした。

【対象】

過去6ヶ月以内に下肢関節に整形外科疾患の既往のない、健常成人10名(男性6名、女性4名、年齢は24.6±2.5歳、身長168±8.6㎝、体重57±5.0㎏)で利き足を対象とした。

【方法】

TGEは先行研究で用いられている股関節・膝関節屈曲90°、足関節底背屈中間位で行う通常TGEと膝関節伸展位・足関節最大底屈位で行う変法TGEの2条件とした。足趾運動の回数は200回とし、重錘500gをタオルの端に設置し実施した。また、変法TGEはDIPを屈曲しないように指示した。同一被検者に2条件を、1週間以上開けて実施した。

測定項目は舟状骨高と足長とし、介入前後で測定した。測定肢位は、先行研究で高い信頼性を得ている端座位で体重計上に体重の20%を足部に負荷した状態とした。各測定は同一検者が実施した。

解析は、Dr.SPSS Ⅱ for windows 11.0.1 Jを用いて行い、2条件のTGE実施前後で比較し、検討項目は舟状骨高、足長、アーチ高率とし正規性を確認した後、t検定を用いて統計処理を行った。なお、統計学的有意水準は、危険率を5%未満とした。

【結果】

通常TGE実施前の舟状骨高、足長、アーチ高率はそれぞれ4.7±0.9㎝、24.4±1.4㎝、19.1±3.0%で、TGE実施後の舟状骨高、足長、アーチ高率はそれぞれ4.7±0.8㎝、24.3±1.4㎝、19.1±2.7%でTGE実施前後での有意差は認められなかった。

一方、変法TGE実施前の舟状骨高、足長、アーチ高率はそれぞれ、4.5±0.8㎝、24.4±1.5㎝、18.6±2.6㎝で、TGE実施後の舟状骨高、足長、アーチ高率はそれぞれ4.9±0.8㎝、24.1±1.5㎝、19.9±2.4%でありTGE実施前後で全項目に有意差が認められた(p<0.05)。

【考察】

本研究の結果より、変法TGE実施後でMLAが有意に増加した。変法TGEの測定肢位は、膝関節伸展位・足関節最大底屈位である。この時足部外在筋の起始・停止が近づき、筋は弛緩する。さらに、足部外在筋の長母趾屈筋や長趾屈筋を使用しDIP屈曲を行わないように指示した結果、より足部内在筋を使用しやすい条件になったと推察された。この2点が通常TGEと異なり、変法TGEはMLAに影響を及ぼすことが示唆された。

また、橋本らの先行研究によるとフィンガースプリントを使用し、足趾運動200回を週3回、合計8週間実施した場合、立位におけるMLAの形成を認めたと報告している。今回は、臨床で簡易的に用いられるタオルを使用し、運動前後での即時的な効果を検証し、結果的に即時的な運動療法の効果として有効であることが示唆された。

本研究は体重の20%を負荷した状態でアウトカムを測定したが、非荷重下での足長、舟状骨高の測定が出来ていない為、MLAが上昇したのかまたは、荷重時のMLA保持が可能となったのかを断定することが出来ない。今後は、非荷重下でMLAを測定し再度検証することが必要と考えられる。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に基づき、当院の倫理委員会の承認を得て、被検者に十分な説明を行い同意が得られた後に実施した。

著者関連情報
© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top