九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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脳卒中片麻痺歩行の加速度指標とリサージュ図形の関係
*松澤 雄太*貴嶋 芳文*木山 良二*福永 誠司*藤元 登四郎*関根 正樹*田村 俊世
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p. 9

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抄録

【目的】

加速度計は簡便に歩行を計測することが可能で,諸家によりセンサ装着位置や解析方法が検討され,歩行評価や理学療法の効果判定等に利用されている.しかし,加速度のデータは対象者が理解することが困難である.そのため,歩行中の前額面,矢状面における加速度を散布図として可視化したリサージュ図形を用い,結果の解釈やフィードバックを容易にする手法が考案されている.また,リサージュ図形の特徴を示す指標として,各4つの象現の矩形面積の比を基に算出するLissajous Index (LI)が報告されている.前額面の第1・2象限のLI(左右LI)は,完全な左右対称で0となり,値が大きいほど非対称になることを意味する.若年者に比べ,高齢者で左右LIが高値を示すことなどが指摘されており,LIは解釈が容易で治療の効果判定にも有効であると考えられる.しかし,片麻痺患者の歩行時の加速度のリサージュ図形に関する報告は少ない.本研究の目的は,片麻痺患者の歩行中の加速度のLIとその他の加速度指標との関連性から,リサージュ図形の有用性について検討することである.

【方法】

対象は,脳卒中片麻痺者18名(年齢66±11歳,男性10名,女性8名,下肢Br.stage Ⅲ2名,Ⅳ8名,Ⅴ8名,右片麻痺9名,左片麻痺9名)であった.3 軸加速度センサ(サンプリング周波数100Hz)の感度方向は,後方向,右方向,上方向を正とした.加速度センサを第3腰椎レベルに装着し,屋内16m直進路を快適速度で歩行させ,中央の5歩行周期を分析対称とした.1歩行周期を100%として時間正規化を行い,LI,Root Mean Square (RMS),Root Mean Square ratio (RMSR),Autocorrelation (AC)の定常性および対称性,歩行速度を算出した.LIは,5歩行周期を加算平均し,左右LI(前額面,第1・2象限)と,前後LI(矢状面,第1・2限),上下LI(矢状面,第2・3象限)を算出した.前後LIと上下LIは,値が大きいほど後方,下方への加速度が大きいことを示す.各LIと加速度指標の関係を検討するため,Spearmanの順位相関係数を用いた.統計学的検定にはR-2.8.1を使用し,有意水準は5%未満とした.

【結果】

左右LIと全ての加速度指標には,有意な相関を認めなかった.上下LIと前後・上下・左右方向のRMS (rs=0.56-0.61, P<0.05),上下AC定常性(rs =0.61, P<0.01),上下AC対称性(rs =0.49, P<0.05),歩行速度(rs =0.58, P<0.05)に有意な正の相関を認めた.

【考察、まとめ】

本研究の結果から,矢状面における上下LIは,RMSや上下ACとの相関を示し,片麻痺歩行における定常性や対称性を反映することが示唆された.片麻痺患者の歩行時加速度のリサージュ図形では,特に矢状面における上下方向の形状が重要であると考えられた.リサージュ図形は臨床における簡便な歩行分析やフィードバックの手段としての応用が可能である.今後は,歩行の自立度や下肢筋力が,リサージュ図形に及ぼす影響についても検討をすすめる必要がある.

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者には,研究の趣旨と内容について説明し,理解を得た上で書面にて同意を得た.また,研究の参加は自由意志であり,被験者にならなくても不利益にならないことを十分に説明した.データはコンピューターで処理し,研究の目的以外には使用しないこと,及び個人情報の漏洩に注意した.なお,本研究の内容は所属施設の倫理委員会(承認番号第92号)にて承認を得た.本研究は開示すべき利益相反関係にある企業はない.

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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