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【目的】
ICU入室患者に対して入室早期から積極的にリハビリテーション(以下リハ)を実施するケースが増えており早期離床の取り組みが注目されている.当院では2014年8月からリハスタッフが看護師間の申し送りに参加しICU入室患者の状態や一日の流れの把握,スケジュールの調整,リハが必要な症例の検討に取り組んでいる.本研究の目的はリハスタッフの申し送り参加による効果を検討することである.
【方法】
対象は,2013年8月~12月(以下13),2014年8月~12月(以下14),2015年8月~12月(以下15)の各5ヶ月のICU入室3日以上の患者とした.リハスタッフがICUの申し送りに参加開始した14年と15年と取り組み開始前の13年を比較した.評価項目は,リハ開始までの日数,ICUでの実施率,1ヶ月のICUリハ合計単位数,ICU滞在日数, リハ介入症例の死亡率,死亡症例を除く在院日数およびBarthel Index(以下BI)を比較した.統計解析は,名義尺度にX2検定,その他にone way ANOVA,Kruskal-Wallis検定を用い多重比較にTukey法,Steel-Dwass法を使用した.
【結果】
対象は172例(男性101例,女性71例,13年57例,14年49例,15年66例,平均年齢78歳)で各年度間に差はない.有意な差を認めた項目として,リハ開始までの日数:13年5.0日,14年3.5日,15年3.0日に短縮,ICUでのリハ実施率:13年61%,14年84%,15年77%と14年以降増加,1ヶ月のICUリハ合計単位数:13年28単位,14年69単位,15年76単位と14年以降増加,在院日数:13年39日,14年37日,15年24日で15年において短縮を認めた.差を認めなかった項目は,3群間のICU滞在日数(中央値):各年度5日,リハ介入症例の死亡率:13年28%,14年27%,15年27%,退院時BI(中央値):2013年80点,2014年50点,2015年60点であった.入院時と退院時の差を入院期間で除したBI利得率(中央値)は13年1.8,14年1.1,15年2.3と15年で高かった.
【考察】
近年,早期のリハ介入による有効性が数多く報告されており, ICU専従配置による効果として、処方患者数の増加や理学療法介入時間の増加などが報告されている.また,SchweickertらはPTとOTがICUから積極的に介入することにより,ADL改善のみならず,せん妄の割合や長期的な予後に大きく影響することを報告し急性期からの積極的なリハの有効性を強調している.今回,効果を認めた理由としてリハスタッフがICUの申し送りに参加することで,患者状態や一日の流れの把握によりスタッフ間での時間調整,治療目的の明確化につながりリハ開始日数,ICUにおけるリハ実施率,1ヶ月のICUリハ合計単位数,死亡症例を除く在院日数に有意な改善を認めたのではないかと考える.退院時BIに関しては各群間に差を認めなかったが, 入院時と退院時の差のBI利得率で向上を認めた.向上した理由としてリハ開始までの日数の短縮,ICUでのリハ実施率,単位数の向上が影響しているのではないかと考える.また,当院では2014年より地域包括ケア病棟の設立,2015年にベッドコントロールチームを結成した背景もあり在院日数の短縮につながっていると考えられる.本研究の限界として対象者の重症度を統一し比較していないことが挙げられる.今後はICUにおける統一した早期リハの適応・中止の基準プロトコルを作成しICUにおける患者側,医療資源の効果を検討していく必要がある.
【まとめ】
リハスタッフがICUの申し送りに参加することで,リハ開始日数,ICUにおけるリハ実施率,1ヶ月のICUリハ合計単位数,死亡症例を除く在院日数が有意に改善することが示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得てヘルシンキ宣言に沿って研究を行った. 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費,株式,サービス等は一切受けておらず,利益相反に関する開示事項はない.