九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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片麻痺患者における座圧分布測定器を用いた定量的な動的座位バランス評価:パイロットスタディ
座圧中心点の移動距離を麻痺側と非麻痺側での検証
*山﨑 登志也*出口 直樹*光安 達仁*金子 尊志*平田 翔子*白瀧 敦子
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キーワード: 片麻痺, 座圧中心, ADL
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p. 41

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抄録

【はじめに】

脳卒中片麻痺患者の座位バランスは、ADLと関連がある(Sandinら,1990)とされており、重要な評価項目である。座位バランスの評価は、座位リーチテストが一般的で、前方及び非麻痺側に行い、麻痺側の定量的なバランス能力評価とは言い難い。近年、座位バランスの評価として座圧分布測定器で座圧中心(以下、COP)の移動距離を評価しているものが散見される。光安ら(2016)はCOPの移動距離とFIMとの関連を明らかにしているが、麻痺側及び非麻痺側の影響が強いのか不明であり、麻痺の程度は考慮されていない。そこで、本研究ではCOPの移動距離における麻痺側及び非麻痺側の関係を麻痺の程度の影響を補正して明らかにしたので報告する。

【方法】

対象は当院入院中の端座位保持が自立した脳血管疾患片麻痺患者21名(男性10名、女性11名、年齢62.5±14.1歳)とした。コミュニケーション困難な重度の失語症患者・動作遂行の困難な高次脳機能障害患者は対象から除外した。麻痺の程度はBrunnstrom recovery stage(以下、Brs).上肢Ⅱ:6名,Ⅲ:5名,Ⅳ:6名,Ⅴ:2名,Ⅵ:2名、Brs.下肢Ⅱ:1名,Ⅲ:7名,Ⅳ:5名,Ⅴ:5名,Ⅵ:3名であった。COPの計測はSRソフトビジョン数値版(フコク物産)を用いた。足が着かない高さの座面に深く座り、腕を組み左右にバランスを崩さない最大範囲で重心移動を実施。左右の最大到達点の幅を算出(以下、左右)し、静止座位のCOPの位置から麻痺側最大到達点の幅(以下、麻痺側)及び非麻痺側最大到達点の幅(以下、非麻痺側)を算出。体格の違いを考慮するため両大転子の幅で除し標準化し、計測値とした。事前に十分な説明を行い、練習を1回、計測を3回実施。左右と麻痺側と非麻痺側の相関を年齢とBrs.上肢・下肢を制御変数とした偏相関分析にて検討した。有意水準は5%とした。なお統計はSPSS 21.0を用いた。

【結果】

計測値の左右は0.49±0.15麻痺側は0.25±0.08、非麻痺側は0.24±0.06であり、FIM-mの合計点は73.7±13.8であった。

左右、麻痺側、非麻痺側のすべてに有意な相関を認めたFIMの項目は、整容(r=0.77 p<0.00、r=0.52 p=0.03、r=0.61 p=0.01)、上衣更衣(r=0.64 p<0.01、r=0.48 p=0.04、r=0.72 p<0.01)、ベッド移乗(r=0.54 p=0.02、r=0.47 p=0.05、r=0.49 p=0.04)であった。左右、麻痺側のみに有意な相関を認めたのは、トイレ動作(r=0.48 p=0.04、r=0.50 p=0.04)であった。左右、非麻痺側のみに有意な相関を認めたのは、下衣更衣(r=0.51 p=0.03、r=0.47 p=0.05)であった。左右で有意な相関を認めたものの麻痺側および非麻痺側に相関を認めなかったのは、トイレ移乗( r=0.50 p=0.03)であった。

【考察】

今回、COP移動距離は歩行などの立位でのADL動作と、食事・清拭・排尿管理・排便管理は座位での重心移動が少ないADLとは関連は見られず、整容・上衣更衣・下衣更衣・トイレ動作・ベッド移乗・トイレ移乗の座位での活動を伴うADLと関連が見られた。その中で左右以外に下衣更衣は非麻痺側と、トイレ動作は麻痺側と関連があり相反していた。また、トイレ移乗では左右のみ関連が見ら、これは麻痺側と非麻痺側でバランスをとる者がいたためと考えられる。つまり座位バランスを麻痺側と非麻痺側に分けて評価することが必要であることを示唆できた。今後は,ADLの自立に関連する因子を明らかにするために症例数を増加し,高次脳機能障害に加え麻痺側・非麻痺側のCOPの影響を回帰分析にて明らかにしたいと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当院倫理委員会の承認を得た(承認番号:FRH2015-R-029)。対象者への説明は当院倫理規定に基づいた研究説明書、同意書を準備し、十分な説明を行い書面で同意を得た。また本研究による利益の発生は行われていない。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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