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【はじめに】
Branch atheromatous disease(以下BAD)における先行研究は多数あるが、リハビリテーション(以下リハ)と関連のある報告は少ない。BAD患者においてはリハ開始後、麻痺の進行、呂律障害など様々な症状が出現することが少なくない。私たちはその些細な変化を見逃さないため、発症早期のリハ介入には、十分に注意を払わなければならない。今回BADと診断され、初診時よりNIHSSが増悪した群(以下、症状増悪群)と、増悪しなかった群(以下、症状非増悪群)の2群間に分け、様々な項目との関連性を調べた為、以下に報告する。
【方法】
対象は、2013年2月14日から2015年4月11日の期間に当院に救急搬送され、脳神経外科にてBADと診断された43名の入院患者(男性:21名、女性:22名、平均年齢:73.3±11.1歳)。評価項目は、①年齢、②性別、③高血圧、④喫煙、⑤糖尿病、⑥脂質異常症、⑦在院日数、⑧入院時NIHSS、⑨退院時NIHSS、⑩リハ開始時Brunnstrom stage(以下Br.stage)上肢・手指・下肢、⑪退院時Br.stage上肢・手指・下肢、⑫入院時FIM、⑬退院時FIM、⑭退院時Modified Rankin Scale(以下MRS)、⑮90日後MRS、⑯転帰の16項目とした。統計学的解析はSTATMATE ver.3.18を用いて、2群間において各項目を対応のないt検定にて比較検討した。また、症状増悪の有無との相関も各項目において検討した。いずれも有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者43名のうち、症状増悪群は17名(39.5%)、症状非増悪群は26名(60.4%)であった。症状増悪群は平均2.1±1.7病日目で症状増悪をしていた。⑨退院時NIHSS、⑪退院時Br.stage上肢・手指・下肢、⑬退院時FIM、⑭退院時MRS、⑮90日後MRS、⑯転帰において、2群間に有意差を認めた。①年齢、②性別、③高血圧、④喫煙、⑤糖尿病、⑥脂質異常症、⑦在院日数、⑧入院時NIHSS、⑩リハ開始時Br.stage上肢・手指・下肢、⑫入院時FIMにおいては、有意差を認めなかった。また、症状増悪の有無と各項目の相関において、16項目すべてに明らかな相関は認めなかった。
【考察】
症状増悪群と症状非増悪群で、入院時NIHSSやリハ開始時FIMにおいて差は認めなかった。しかし、退院時NIHSSや退院時FIMにおいて、症状増悪群の方が症状非増悪群と比べ、有意に低値であり障害が残存しているということがわかった。退院時Br.stage上肢・手指・下肢においても、Stageが低く、ADLに支障を来していると考える。また、症状増悪群において、転帰先も、自宅ではなく回復期病院等への転院が多数を占めていた。これも退院時ADLが低いことが要因として考えられる。先行文献では、BAD患者の機能予後は不良であるということが示されているが、本研究からも、BAD発症後の症状増悪の有無によって機能予後は左右されることが示唆された。症状増悪の有無と各項目の相関において有意差を得られなかったことから、BAD患者は、発症後に症状増悪を予測することは難しいということが言える。現在のところ、症状増悪因子が明確でないため、急性期からBAD患者のリハを開始する際、症状の増悪について注意深く評価を行うことが重要であり、十分なリスク管理を行った上での早期リハが望まれる。
【まとめ】
今回の研究で症状増悪因子を明確にすることはできなかったが、症状が増悪すると麻痺やADLの改善に影響を及ぼすことが分かった。BAD患者の発症後の症状増悪は予測が困難なため、より注意深い評価と、十分なリスク管理のもと早期離床を行うことが重要である。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究においての主旨を、症例または家族に説明し同意を得た。なお、収集したデータは匿名化し個人情報管理に十分注意を払った。