九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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種子島医療センター地域包括ケア病棟 離床への挑戦
~「病気に勝動」を通してみえてきたもの~
*中村 裕二*西 愛美*八木 通博*福島 佑*田島 拓実*前田 徳亮*田上 めぐみ*早川 亜津子*酒井 宣政*猿渡 邦彦*髙尾 尊身
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p. 65

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抄録

【目的】

種子島の高齢化率は約33.8%であり、人口の減少と並行して高齢化率は年々増加傾向にある。当院では、平成27年1月より種子島唯一の地域包括ケア病棟を開始した。開始以前より離床促進、廃用症候群予防を目的に取り組み、個別訓練と併せて目的プログラム「病気に勝動」を開始した。今回、「病気に勝動」に参加することで患者自身に起こった変化に関する調査・分析を実施し、若干の考察を得たためここに報告する。

【方法】

1.対象

期間は平成27年7月から10月。当院地域包括ケア病棟に入院中で「病気に勝動」の参加者(参加者数平均:14名)のうち、勝動内容を覚えており「はい・いいえ」の返答ができる74名(男性15名、女性59名、平均年齢82.3歳)を対象とした。

2.評価・分析

「病気に勝動」に取り組むことによって参加者に起こる変化について、レクリエーション協会監修のレクリエーション評価スケール1)を簡略化したものを勝動評価スケールとして用い検証した。スケールは、①関わり、②社会性、③精神面の3つの大項目から構成され、各大項目は3つの小項目を含む。小項目について「はい・いいえ」の2択で回答し、「はい」を1点、「いいえ」を0点とした。勝動への初回参加時(初期)と退院時(最終)にスケールによる聞き取り調査を実施し、初期と最終との変化を標本一対のt-検定を用いて分析を行った。

【結果】

勝動評価スケールの検証結果

関わりの項目で、初期は平均2.61点、最終2.93点、社会性では、初期1.90点、最終2.54点、精神面では、初期2.59点、最終2.91点であった。

3項目の初期・最終における変化について、標本一対のt-検定を実施した結果、全ての項目において有意差が認められた。

【考察】

今回参加者に対し、評価スケールを用いた聞き取り調査において初期と最終を比較した結果、3つ全ての項目で有意な変化を示した。これは「病気に勝動」が機能訓練では得がたい他者との交流を促進するレクリエーションの要素も持つためであると考えた。また、大内2)は「機能訓練のみを漫然と続けるのではなく、人との関わりや活動を用いること」「“活動”“参加”に繋げていくことが重要である」と述べており、「病気に勝動」は多数の参加者が集まるという性質上、他者との交流を促し、地域生活における主体性の発展のために重要であると考えられる。

【まとめ】

高齢者に起こる廃用症候群には様々な要因があり、身体の不活動により起こる廃用症候群だけではなく、精神的側面に関連する廃用症候群にも焦点を当て、勝動評価スケールを用いた。その結果、患者自身に起こる精神的変化を捉えることができ、退院後の社会参加を促すことが可能であると感じた。

今後も、離床時間増加による廃用症候群の予防や退院後の社会参加を促すことを念頭に、ADL能力向上に視点を当てた活動やその評価、より地域での活動に即した取り組みを提供していきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の計画立案に際し、事前に当院の倫理審査委員会の承認を得た(承認日:平成27年6月18日)。また、研究の実施に際し、対象者に研究について十分な説明を行い、同意を得た。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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