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【目的】
二分脊椎は胎生期における脊椎および脊髄の先天的異常であり,将来的な運動機能の予測としてSharrard分類を参考に麻痺レベルから目標を設定することができる.今回の報告目的は,脊髄病変により運動発達に遅れをきたした幼児期男児に対する理学療法について紹介することである.
【方法】
症例は在胎27週で胎児脊髄髄膜瘤と診断され,腰仙髄(L4/5,L5/S1)以下に神経の脱落が認められた(Sharrard分類Ⅲ群).生後7ヶ月時に理学療法開始となった.両下肢に弛緩性麻痺が認められ,両股関節脱臼を合併していた.1歳7ヶ月時,腰仙髄以下の支配神経の筋に低緊張が認められた.筋力は自動運動の観察からMMTによる段階づけを基準に行うと,頸部と上肢の運動,体幹伸展,股関節屈曲,膝関節伸展は3以上,体幹屈曲,股関節内転・内旋は2,股関節伸展・外転・外旋,膝関節屈曲,足関節底背屈は1以下と判断した.姿勢は座位,介助立位が可能であり,腰椎の過前彎を特徴としていた.立位を拒否することは多かったが,エレベーターのボタンを押すことができる環境では立位の受け入れは良好であった.Chailey姿勢能力発達レベルの椅子座位はレベル4,立位はレベル3であり,粗大運動は四つ這いやつかまり立ちが困難であった.評価結果とSharrard分類より将来的に杖歩行が獲得できるよう,早期から立位練習を行う必要があると考え,椅子座位では坐骨から足底への体重移動より立ち上がりが可能になること,立位では両手を離すことが可能になることを目標とした.この時立位では足底に体重をのせながら,両股関節脱臼による骨の支持性低下に対し,坐骨部に支持部を設けることで股関節への負担が軽減できるよう立位台を使用し,Chailey姿勢能力発達レベルを指標として調整と導入を行った.プログラムの流れは,椅子座位で坐骨から足底への体重移動を行った後,座面を前傾し足底での荷重量を増やした.座位での足底荷重を促した後,立位台に乗車して立位で「エレベーターのボタン押し」課題を行った.
【結果】
1ヶ月後,骨盤前後傾が可能になり座位や立位において腰椎の過前彎が減少し,3ヶ月後には,立位台上で膝関節屈伸,四つ這い,5ヶ月後には,体幹,上肢を支持した立ち上がりが可能となった.半年後,筋力(MMT)は体幹屈曲,股関節内転・内旋,膝関節屈曲は3以上,股関節外転は2となり,Chailey姿勢能力発達レベルの椅子座位はレベル6へ,立位はレベル4へと向上した.粗大運動は四つ這いや立ち上がり,つかまり立ち,移乗を獲得した.
【考察】
筋力増強には最大筋力の60%以上の運動強度,6~10秒の持続時間,週1回以上の頻度,12~20週の期間の4つの条件が必要であり,MattheusとKruse(1975)は運動頻度が多いほど最大筋力が伸びた者の人数が多かったと報告している.本症例では週1回の理学療法に加え,自宅での自主的トレーニングを行った結果,目標を達成した.またMcGrow(1935)は運動発達過程の運動学習について,乳幼児では学習に最適な時期があり,運動に対する動機付けなどが不十分であれば学習効果は期待できないと述べている.今回「運動に対する動機付け」に配慮して実施し,立位時にエレベーターのボタンを押せたことは症例の自己有能感を高め,自宅での高頻度の立ち上がり動作から今回の結果に繋がったと考える.
【まとめ】
乳幼児に対する理学療法では,単に動作練習を行うだけでなく,児にとって意味のある「運動に対する動機付け」を明確に行うことが重要であり,運動頻度の確保には自己有能感を高めた運動が必要であることが示唆される.
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告はその旨を保護者に説明し,同意を得た.