九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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初回大腸癌根治術患者における手術前栄養状態と手術後経過の関係
小野寺式予後栄養指数を用いて
*小林 道弘
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キーワード: PNI, 周術期, 手術後経過
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p. 76

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抄録

【目的】

手術前の栄養状態は、合併症発生率や予後に影響を与えると報告されている。手術前の低栄養状態を評価し、手術危険度を予測する事は、手術後の合併症発生率低減や予後の改善に有用と考えられる。本邦では栄養状態の評価として、簡便に実施できる小野寺式予後栄養指数(Prognostic Nutritional Index:PNI)が広く利用されている。上部消化管手術症例ではPNI≦40は、切除・吻合禁忌と報告されている。当院では2014年7月より全身麻酔下での手術症例に対して手術前PNIを評価し、各職種間で情報を共有することでリスク管理に努めている。そこで、手術前PNIと下部消化管手術症例の関係性を明らかにする必要があると考え、検討したので報告する。

【方法】

2014年7月からの1年間に当院で全身麻酔下での初回大腸癌根治術を行った症例のうち、手術前PNIが算出されていた101例(男性52例、女性49例、平均年齢64.3±11.8歳)を対象とした。対象者をPNI≦40(A群:9例、平均年齢71.7±16.0歳)、PNI>40(B群:92例、平均年齢63.6±11.2歳)に分類した。診療記録よりretrospectiveに患者背景(年齢、BMI、術前呼吸機能、術前Barthel Index:B.I、腫瘍部位、病期)、手術後経過(歩行開始日、術後1W・2WのB.I、経口食事開始日、手術後在院日数、合併症発生率)を個人が特定されない状態で抽出し比較した。統計学的処理はMann-Whitney,s U testを用いて有意水準5%で検定した。

【結果】

A群とB群で手術前の身体的特異差に統計学的有意差は認めなかった。病期(A群/B群:Ⅰ12%/30% Ⅱ22%/12% Ⅲa22%/22% Ⅲb22%/20% Ⅳ22%/16%)では、わずかにA群の方が進行症例の割合が多かった。手術後経過では、A群の合併症発生率が高かった(A群:56% B群:24%)が、内訳(A群/B群:腸管合併症43%/44% 不穏29%/20% 呼吸器合併症0%/20% 運動器合併症14%/12% )に大きな差は認めなかった。

【考察】

当院の初回大腸癌根治術症例では、手術前PNIが低下していても経過は悪くなく、腸管合併症においても大きな差は生じていなかった。当院では全身麻酔下で手術を施行する全症例に対して、術後1日目より理学療法士による早期離床を開始する。また、外科NSTチームで1回/週カンファレンスを行い、各職種間で情報交換を行う。経過が不良な症例には、情報を基に運動負荷や訓練内容の変更を行っている。これらが手術後、症例の早期ADL自立、合併症予防につながり在院日数の短縮化が図れているのではないかと考える。今回の検討では、手術前低栄養患者の症例数が少なかったので、今後も継続してデータを収集し比較・検討を行っていきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の計画立案に際し,事前に当院の倫理審査員会の承認を得た。 また研究を実施に際し,対象者に研究について十分な説明を行い,同意を得た。 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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