抄録
上腕骨通顆骨折手術後の成績不良例の問題点を挙げる.1994年から治療した上腕骨通顆骨折手術後の成績不良の6例を提示する.当科治療時の年齢は65~86歳で,全例が女性であった.成績不良の原因は感染が2例,異所性骨化が2例,変形癒合が2例,偽関節が1例,尺骨神経麻痺が1例であった.内固定材料の抜去を除く手術回数は前医の手術も含め1~4回であった.上腕骨通顆骨折は周囲に軟部組織が乏しく,感染が続発しやすい.骨粗鬆症が基盤にあり,初期の内固定力の弱さで術後の再転位も生じやすい.一方で,強固な固定をめざすあまり侵襲が大きくなって偽関節の危険性が増し,内側に設置するプレートに起因する尺骨神経障害も起こりうる.固定力が強固で術後合併症の少ない固定材料で,より低侵襲な手術方法を選択すべきである.