抄録
日本手話には、複合語を構成する2つの単語が同じであるものの、単語の配列順序が相反する事例(=鏡像語)が散見される。本稿は19世紀中期から現在にかけて刊行された手話辞書などを調査し、日本手話の鏡像語〖今年〗には3種類の表出型(α型〖【今】【年】〗、β型〖【年】【今】〗、γ型【今】)があることを確認した。さらに、認知言語学を援用して、3 種類の表出型にみる分析可能性や派生機序を図式化し、〖今年〗の多系統的系譜を作成した。その結果、α型はγ型から並列スキーマにより派生したのに対し、β型は重ねスキーマに基づく縮合により派生した可能性が窺われた。